最新記事

教育

米国、そして韓国でも歪んだ社会を映す受験競争 富裕層目指せるのは富裕層だけ?

2019年3月28日(木)20時00分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

誰しもが子供にいい教育を与えたいと思うが、それがエスカレートすると……。写真は娘の試験解答を書き換えさせて起訴された女優フェリシティ・ハフマン(2019年 ロイター/Mike Blake)

<子どもをもつ親なら、誰しもわが子をいい大学に入れていい会社に就職させたいと願うものだが、実際にそれを実現できるのはごく限られた人だ>

3月12日ハリウッドに衝撃が走った。芸能人や著名人40人余りがコンサルタント会社を通じ、子供をイェール大学やスタンフォード大学などの名門大学に不正入学させていたという、まるで映画のようなニュースが飛び込んできたのだ。その中には日本でも人気の高かったドラマ『フルハウス』にレベッカ役で出演していたロリ・ロックリンや、『デスパレートな妻たち』に出演し過去にアカデミー賞にノミネートされたこともあるフェリシティ・ハフマンなどの女優たちも含まれている。

また、このスキャンダルはホワイトハウスにまで飛び火し、トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーのハーバード大学への裏口入学の疑惑が浮上した。さらに、トランプ大統領本人とその息子トランプ・ジュニア、娘イヴァンカがペンシルバニア大学ウォートン校に入学できたのは、莫大な寄付をした見返りとしての裏口入学ではないかという疑惑ももち上がっている。アメリカでは、大学の施設の増改築に際して寄付した人の名前が新しい施設に刻まれていたり、寄付した人の子供が入学にあたって優遇されるのが暗黙の了解のようになっている。

今回のスキャンダルが発覚してから、「貧富の差で進学の機会が左右されるのはどうなのか?」「いや、金持ち数人入学させて、その分施設が立派になるんだったらそれでいいじゃないか」など、米国内でも賛否が分かれているのが現状だ。

教育大国、韓国でも裏口入学が問題に

さて、お隣りの韓国では裏口入学などはどうだろうか。韓国は教育熱心なことで有名だ。実際、筆者が韓国に住んでいたときも、大学の図書館の自習室は夜遅くまで勉強するため椅子取りの争奪戦。英語など外国語ができて当たり前という雰囲気だった。友人の子供たちは、毎日朝から晩までさまざまな習い事に通わされていた。日本のセンター試験に相当する大学修学能力試験当日は国をあげての一大行事となり、英語の試験ではヒアリング問題で騒音が受験生の邪魔になってはいけないと航空会社が離着陸時間を調整するほどだ。

そんな教育熱心な韓国でも、アメリカ同様裏口入学スキャンダルは取り沙汰されてきた。2016年に弾劾された朴槿恵前大統領の長年の友人チェ・スンシルは、今回のアメリカのスキャンダル同様、娘のチョン・ユラを乗馬のスポーツ推薦枠で名門梨花女子大に入学させ、その乗馬の成績自体も買収されたもので偽装成績による裏口入学だったと言われている。

また、2018年にはK-POP人気バンドCNBLUEのメンバー、ジョン・ヨンファが、慶煕大学の博士課程に面接なしで入学していたということが問題になった。これは有名人を入学させて定員割れを防ぎたい大学側が事務所へ要望したもので、本人の意思ではなかったようだが、責任を取ってレギュラー出演していたテレビ番組を降板している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国当局、地方政府オフショア債への投資を調査=関係

ビジネス

TikTok米事業継続望む、新オーナーの下で=有力

ワールド

トランプ前米大統領、ドル高円安「大惨事だ」 現政権

ビジネス

米ペプシコの第1四半期決算、海外需要堅調で予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中