最新記事

映画

新型コロナウイルスにジェームズ・ボンドも倒れる? 新作から映画祭までコロナショックに飲み込まれた映画界

2020年3月9日(月)20時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

『NO TIME TO DIE』の宣伝は既に昨年末から始まっていたが……。写真は昨年12月4日ロンドンに登場した同作のポスター Lisi Niesner - REUTERS

<007もミッション・インポッシブルも、見えないウイルスに屈してしまうのか>

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは、収束するどころか感染は拡大するばかりだ。毎日のように更新される悲惨なニュースに心も滅入ってしまう。こういうときこそ、エンターテインメントのパワーが必要なのだが、残念なことにコロナウイルスの影響は世界規模で映画界にも影を落とし始めている。

日本でも根強い人気がある「007ジェームズボンド」シリーズ25作目となる新作『NO TIME TO DIE』が、コロナウイルスの影響で公開延期されることとなった。当初3月末にイギリスで、その後4月上旬にアメリカ等各国で公開予定だった。

しかし、コロナウイルスの感染が世界規模で拡大したことによって、公開を半年繰り下げ、イギリスでは11月12日、アメリカ他各国では翌週末11月25日に封切られることが公式に発表された。

この延期により発生する損失は、なんと3000〜5000万ドルと報道されている。2月に開催されたスーパーボウルでの映画宣伝費だけでも、制作のMGMが支払った額は450万ドルと言われている。しかし、それでも今映画館に集客が見込めない状態で公開するよりも損失は少ないと踏んだのだろう。逆に公開をずらしたことがニュースで報じたため、これが宣伝となり怪我の功名となったともいえる。

映画館が危機的状況に

エンターテインメント業界でも、特に映画館は密閉された空間というイメージがあるため、客足が遠のいている。イギリスBBCの4日報道によればコロナウイルスによる今年の全世界のボックスオフィス損失は、50億ドルに上るだろうと発表されている。

また、ハリウッドレポートによると、現在世界第2位の映画市場を誇る中国では、主要映画館7万館が閉鎖されたため、映画業界は大きな損失がでているという。映画館閉鎖後、約20日間のチケット収益は中国全土でわずか390万ドル。昨年の同時期の集計は15億ドルを超えており、実に380分の1にまで落ち込んでいる。その違いは一目瞭然だ。

一方、中国はその経済力で、ハリウッド映画にも多くの作品に出資しているため、今年下半期以降の映画制作に世界規模で影響が出るかもしれない。

映画撮影現場でもコロナパニックが発生し始めている。映画『ミッション・インポッシブル』の続編パート7は、イタリアでの撮影が進められていたが、先月から急激にコロナウイルスの感染拡大が進んだため、撮影が延期された。

制作のパラマウントピクチャーズは、当初パート7は、2021年7月23日、パート8は2022年8月5日公開予定と発表していたが、このまま延期が続き、撮影スケジュールがずれ込むと、公開日変更の可能性がある。

また、ソニーピクチャーズのロンドン撮影スタジオでは、スタッフの感染が疑われ、スタジオを緊急閉鎖した。ヨーロッパでの感染が拡大していることを考慮して、現在ソニーピクチャーズはロンドン/パリ/ポーランド等に位置する会社を一時閉鎖している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中