最新記事

映画

韓国「アナ雪2」1000万人突破の影でディズニー訴えられる 大ヒットを支えた「ドベ」とは?

2019年12月15日(日)14時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

『アナ雪2』に「ドベ」された上映スケジュール YTN / YouTube

<流行り物に敏感な韓国では、映画も人気が出るとワッと観客が押し寄せる。大ヒットが生み出す影とは──>

11月22日に日本でも封切られ、大ヒット上映中のディズニーアニメ『アナと雪の女王2』。お隣りの韓国でもその人気はすさまじく、12月14日付けの観客動員数では、外国映画の観客動員歴代4位にランクインする1175万7523名を記録した。その後もオンライン予約率を35%以上キープするなど客足は伸び続けている。前作『アナと雪の女王』も観客動員1029万人を記録する大ヒットとなったが、新作はそれを上回る人気だ。

しかし、その大ヒットの裏ではこの新作による「スクリーン独占問題」が話題となっている。市民団体「庶民民生対策委員会」は、国内の映画館のスクリーンを同作品が独占しているとし、今月2日独占規制及び公正取引法違反でウォルトディズニーコリア社を告発したと明らかにした。

委員会の発表によると、『アナと雪の女王2』は、韓国の映画館スクリーンの実にを88%を独占し、上映回数が1万6220回(11月23日基準)を上回ったとしている。これは韓国の映画史上最高の記録だ。

また、映画関係者によって構成された団体「映画多様性確保と独占解消のための映画人対策委員会」は、公開日翌日である11月22日に緊急記者会見を開き、「『アナと雪の女王2』によって映画上映の多様性が失われている。スクリーンの独占を禁止する映画法の改正を求める」と訴えた。

大ヒットを支える「ドベ」とは?

スクリーンの独占問題は今回に始まった事ではない。この問題が広く知れ渡ったのは、2006年に封切られた『グエムル-漢江の怪物-』(ポン・ジュノ監督)からだと言われている。最終観客動員数1301万名を記録した同作は、公開当時、最高で38.3%のスクリーンを独占し、上映回数率は43.8%と半分近くにまでのぼり、映画ファンと映画関係者を中心に非難の声が上がった。

しかし、今でも映画会社の力を入れる大作が公開されるたびに、劇場では同じ映画の上映を繰り返している。韓国映画界では、上映スケジュール表に同じ映画がずらりと並んだ状態を「ドベ(壁紙を貼る)」と呼んでいる。ドベされた上映スケジュールに、観客からは見たい映画がやっていないという不満の声が上がり、小規模映画は隅に追いやられている。このような映画は誰も見に来ない早朝や深夜上映ができればよい方で、たとえ素晴らしい映画だったとしても上映館を押さえることすらままならないのが現状だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO

ビジネス

米総合PMI、4月は50.9に低下=S&Pグローバ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中