最新記事

映画

ネット時代に生き残りかける映画館 料金細分化の韓国と格安定額制のアメリカ

2018年5月2日(水)18時26分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


映画ファンの救世主登場?

これまでにない新しい手法で映画館に観客を集めているMoviePass


値上がりし続ける映画入場料。ファンは今後どのように映画館で映画を楽しめばいいのか? そのヒントとなるシステムがすでにアメリカでスタートし大ヒットしている。それが「MoviePass」である。その名の通り月額たった9.95ドル(約1,100円)払えば映画が見放題(ただし1日1本まで)という映画好きには夢のような定額サービスで、昨年末には加入者が100万人を、さらに今年2月には200万人を突破して話題となった。

筆者もアメリカで早速加入し、映画を毎日映画館で見るようになった。ワシントンDCの映画料金は10ドル〜12ドル前後。1本見ただけで元が取れるのである。大体どこの映画館(小劇場やアート系映画館では使用できないところもあり)もカバーしている。もちろん最新の封切り映画もこのパスで見ることができる。

一方、アメリカの映画館チェーン「シネマーク」は、ムービーパスの勢いに対抗して、シネマーク独自のメンバーシップ制度を発表。こちらは入会で1か月1本無料などのサービスが受けられる。アメリカの興行界もさらなる値段サービスに動き出した。MoviePassは大きな起爆剤になったようだ。

MoviePassはNetflixやRedboxというDVDレンタルサービスでCOOだったミッチ・ロウという人物が2016年にCEOに就任。昨年から会費を9.95ドルに値下げして会員を増やしてきた。入場者数に合わせて映画館側にその分の料金を支払うということで、会員が映画を見れば見るほど会社としては赤字が増える。

果たしてそんな商売がいつまで続くのか、将来的にどういうビジネスモデルを描いているのか明らかにはされていないが、2017年に親会社がマーケティング会社になったことから、会員の映画鑑賞についての情報を分析して映画会社などへ販売するのではないかと言われている。

今ではネット環境があればどこでも映画が気軽に見られるようになった。NetflixやHuluなどの定額で見放題というネット配信サービスが消費者に受け入れられて定着している。ムービーパスはそれを映画館に「逆輸入」し、映画ファンのニーズにぴったりハマったというわけだ。日本や韓国の映画業界もただ値上げばかりを考えるのではなく、映画料金システムそのものを見直さなければいけない時期に来ているのかもしれない。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中