最新記事

CIAに学ぶビジネス交渉術

ビジネスの交渉に必要なことはすべてCIAが知っている

2019年7月2日(火)18時40分
ニューズウィーク日本版編集部

Kevin Lamaroue-Reuters

<「ビジネス交渉とスパイ活動の違いは、銀行業と建設業の違い程度」と、元CIA工作員のグレン・カールは言う。仕事を成功させる7つの秘訣とは? 国民性や文化・伝統の違いを交渉に生かす方法とは?>

ニューズウィーク日本版のコラムニストを務めるグレン・カールは、元CIA工作員。CIAと言うと『ミッション・インポッシブル』のイーサン・ハントのようなイメージを持つ人がいるかもしれないが、カール自身は米ニューイングランド地方に住む、理知的で礼儀正しく、人間関係を大切にする紳士的な人物だ。

CIAにまつわるその種のイメージが、まったくの間違いというわけではない。しかし「自分と関係のない異世界の話」としか捉えていないとしたら、もったいない。なんといってもCIAは現在する世界最強のスパイ機関であり、その組織マネジメント術や交渉術には、私たちが住む「現実世界」にも役立つヒントが多く含まれている。

編集部はカールに依頼し、滅多に明かされることのないそれらの「CIA流●●術」を、日本の読者のために特別に公開してもらった。その第1弾が昨年8月28日号の「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集であり、イメージをいい意味で裏切る、どんな組織にも応用可能なマネジメント術は好評を博した。

【参考記事】企業もスパイ機関も同じ CIAが説く意外な最強リーダー論

このたび、本誌は第2弾となる「CIAに学ぶビジネス交渉術」特集(7月2日発売)を組み、再びカールに筆を執ってもらった。特集の冒頭で、彼はこう書く。


諜報活動という言葉から連想するのは007シリーズのような小説や映画。ビジネスとはおよそ懸け離れた世界だ。実際、情報機関の工作員は飛行機から飛び降りもするし、テロリストを尋問し、警備の厳重な建物に忍び込むこともある。ジョージ・テネット元CIA長官がいみじくも言ったように「スパイを募り、秘密を盗む」のが情報機関の仕事だ。

ビジネスパーソンは気晴らしにスパイ映画を見ても、そこに仕事のヒントがあるとは思わないだろう。私は短期間、銀行勤務を経験したが、その業務と諜報活動は表面上まるで別物だ。

だがスパイの世界には、ビジネスの交渉術、つまり取引を成立させる技に直接的に役立つヒントがある。諜報活動とビジネスの交渉の違いは、せいぜい銀行業と建設業の違い程度だ。いずれもその世界に固有の専門知識や技術が求められるが、根本的な目的は同じ。有益な取引を成立させることだ。実業界はしばしば組織を統率する術を元軍人に学ぶが、取引を成立させる術については元工作員がいい教師になる。

カールによれば、「交渉の成功には7段階の心理評価と......そう、心理操作が求められる」。そしてその「心理操作」とは、以下の7つだ。

1. 意思決定者を見極めよ
2. 相手の心理を読み切れ
3. 信用を勝ち得よう
4. 相手の認識を操れ
5. 相手の天使になれ
6. 相手に花を持たせよ
7. 文化的特徴を理解する

詳細は本誌に譲るが、諜報活動の本質は人心掌握術、すなわち「ターゲットの心理」を知り抜くことであり、それは交渉も同じだという。工作員は飛行機から飛び降りたり、別人に成り済ましたりもするが(そう、あなたの持つイメージはまったくの間違いではない)、「それらはただのテクニックであり、2次的な要素にすぎない」と、カールは言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中