最新記事

対談

50代の「オジサン」がAI時代を生き抜くにはどうすべきか?

2018年5月11日(金)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『ポスト新産業革命』の著者で経済評論家の加谷珪一氏(左)と、『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の著者で数学者の新井紀子氏 Newsweek Japan

<教科書が読めない子供たちの未来を憂慮する数学者・新井紀子氏と、「人口減少」時代という視点から近未来の社会や仕事について考える経済評論家・加谷珪一氏が対談。AI時代に求められる人材とは?>

今後10年で多くの仕事がAI(人工知能)に代替されると言われて久しいが、果たして、10年後の労働環境について具体的に想像したことがある人はどれくらいいるだろうか?

「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのディレクタを務める気鋭の数学者・新井紀子氏は著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の中で、「AIやAIを搭載したロボットが人間の仕事をすべて肩代わりするという未来はやって来ません」と、多くの日本人がAIに対して抱いている盲信的ともいえる脅威を否定している。

しかし、これで本当に安心していいのだろうか。同書で、新井氏は「基礎的読解力調査」により導き出された「日本の中高生の多くは中学校の教科書の文章を正確に理解する読解力がない」という結果を憂慮しており、「AIと働くことが不可避な2030年代に向けて、日本を『ソフトランディング』させたい」とも書いている。

AIと働くことが必須になるらしい10年後の2028年、日本は既に人口の20%が後期高齢者と見込まれており、年間の人口減少率が5%を超える縮小均衡社会の渦中にある。

著書『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)で、AIの進化に加えて「人口減少」が重要なキーワードになるとして、日本の近未来の働き方や経済について論じた経済評論家の加谷珪一氏によると、「新時代に求められるのは英語をしゃべることでも、皆がプログラミングをすることでもなく、従来の常識や価値観を転換すること」だという。

加谷氏もまた、AIが全ての仕事を奪う未来を想定してはいない。しかしながら、社会の変化を受け入れられない人にとっては厳しい時代になる、と強調する。

労働人口が著しく減る近未来の日本で、AIが労働市場に進出すれば、深刻な人手不足は緩和されるのではないか? 仮に単純作業がAIに奪われるのであれば、現在そうした職種に就いている者は数値化できないクリエイティブな能力をこれから身につけるべきなのか?

AIと人口減少、働き方、教育......多岐にわたって語り合った新井氏と加谷氏の対談を、2回に分けて掲載する。今回は前編。

◇ ◇ ◇

「中国に負けたくない」日本のAIブーム

加谷 新井先生の著書では、AI技術やディープラーニングに対する、今よくある誤解を指摘なさっています。その一方で、「なぜ飛行機は飛べるのか」は分からなくても実際に飛んでいるんだからそれでいいじゃないか、という意見もあると思います。

私は工学部の出身なので、実際にそういう考え方をするほうなのですが、そうは言っても、「どこまでAIに解決させるべきなのか」ということは検討すべき課題だと考えています。

ビジネスの現場では、「なぜここに人を立たせたらこの商品が売れるのかは分からないが、AIがそう解析したから、そうである」ということが既に起こっています。一体、人間はどこまでAIの出した答えに従うべきなのか、という点に関して、先生はどのようにお考えですか?

新井 まさにそれについて考えさせられることが先日ありました。「AI立国」を宣言したフランスのマクロン大統領が世界から12人のAI専門家を招いて、フランスとヨーロッパのAI戦略を検討する会議を開きました。私もアジアからひとりだけ選ばれて出席しました。

そのとき、やはりフランスやヨーロッパの立ち位置は面白いな、と思ったんです。というのは、例えば日本は、アメリカや中国が何か新しいことをやると急に浮き足立ちますよね。

加谷 確かに「せめて中国には負けたくない」という空気がありますね。おかげでAI関連も一気に賑やかになりましたが、「AI」という名が付けば何でもいいようなところもありますね。

MAGAZINE

特集:遺伝子最前線

2019-1・22号(1/16発売)

革命的技術クリスパーで「超人」の誕生も可能に── 人類の未来を変えるゲノム編集・解析の最新事情

人気ランキング

  • 1

    「お得意様」は気づいたら「商売敵」に 中国の猛追へ対策急ぐドイツ

  • 2

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」というロシアの主張は大間違い

  • 3

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗る豚......すべて「白夜」の続き

  • 4

    仏マクロン政権「黄色いベスト運動」対応で財政拡大 E…

  • 5

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 6

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 7

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 イン…

  • 8

    米政府閉鎖で一カ月近く無給の連邦職員、食料配給に…

  • 9

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両…

  • 10

    地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し…

  • 1

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 インドネシア、違法飼育の容疑で日本人を捜索

  • 2

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 3

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両手は縛られていた

  • 4

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

  • 5

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」という…

  • 6

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗…

  • 7

    インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐…

  • 8

    宇宙から謎の「反復する電波」、2度目の観測:地球外…

  • 9

    タイ洞窟の少年たちは見捨てられる寸前だった

  • 10

    NGT48山口真帆さん暴行事件に見る非常識な「日本の謝…

  • 1

    炎上はボヘミアン・ラプソディからダンボまで 韓国の果てしないアンチ旭日旗現象

  • 2

    口に入れたおしゃぶりをテープで固定された赤ちゃん

  • 3

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 4

    小説『ロリータ』のモデルとなった、実在した少女の…

  • 5

    日韓関係の悪化が懸念されるが、韓国の世論は冷静──…

  • 6

    オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由

  • 7

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 8

    アレクサがまた奇行「里親を殺せ」

  • 9

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 10

    インドネシア当局、K-POPアイドルBLACKPINKのCM放映…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月