最新記事

資産形成

シンガポール人が日本人より金持ちの理由 老後資産は目標1億円超!

2018年2月24日(土)17時50分
花輪陽子(ファイナンシャルプランナー)※東洋経済オンラインより転載

シンガポール人は、どうやって1億2000万円もの資金を捻出するのでしょうか。その方法の一つが、中央積立基金(CPF) という強制自動天引きシステムです。厚生年金のように、雇用主と労働者がともに資金を拠出します。55歳以下の労働者は収入の20%、雇用者は17%を拠出し、収入の1/3以上を積み立てる仕組みになっています。

CPFは医療費用、持ち家取得、老後生活に備えた強制貯蓄の役割を果たし、有事の際の備えとなっています。

CPFはよくできた制度で、複利を利用して最も効率的に貯蓄できるために、若い頃の拠出率が高いのです。これは持ち家率向上にも貢献し、シンガポールの持ち家率は9割程度にも及び、持ち家が老後の備えにもなっています。

ただ、若いときから収入の1/3を積み立てていれば、有事のおカネをすべてまかなえるかというとそうではありません。

「インフレに負けない」3%以上で運用する

シンガポールの知識層は、3段構えで備えている場合が多いのです。CPFで不足するおカネは、税金の優遇を受けながら退職金を積み立てられる銀行口座(SRSアカウント)や、投資型の保険に加入(所得控除あり)するなどをして、目標金額を目指します。投資型の保険の利回りは3%以上の場合が多く、24年程度で倍になる計算です。ただし、日本と違ってインフレ率が高いために、3%以上で運用しないと資産が目減りしていきます。「インフレに負けない」というキーワードをよく聞くのも、日本との違いでしょう。また、中華系のファミリーは子供に助けてもらうという思考が強く、「子供も年金」と言う人もいるほどです。

このように、公的年金の代わりに「3つの積み立て」「マイホーム」「子供」など、何重もの備えを作っています。また、共働き率が非常に高いので、現役時代から老後準備に多額のおカネが捻出できているのです。

老後を送るには、シンガポールのような物価の高い国よりも、医療費なども低い日本で暮らすほうが現段階ではずっと楽です。しかし、将来の日本経済は楽観視できません。2060年には、高齢者1人を1.3人の現役世代が支える不安定な人口構成になります。また、長生きリスクもあり、「人生100年時代」を見据えて、より長期的なライフプランが必要になります。世代によっては逃げ切れるかもしれませんが、さらなる給付のカットや保険料の引き上げが行われる世代も出てくるでしょう。つまり、シンガポールのように、自助努力でおカネを準備しなければならないことが予測されます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中