最新記事

アメリカ経済

米、景気回復が早くも腰折れ 感染再拡大で客足鈍る

2020年7月3日(金)10時22分

米経済は新型コロナウイルス禍に見舞われながらも過去2カ月間、予想を上回るペースで雇用が伸びている。しかし、最近のコロナ感染再拡大で感染防止に向けた制限措置が復活している州もあり、景気回復は早くも腰折れする恐れがある。カリフォルニア州アルカディアで6月撮影(2020年 ロイター/Mario Anzuoni)

米経済は新型コロナウイルス禍に見舞われながらも過去2カ月間、予想を上回るペースで雇用が伸びている。しかし、最近のコロナ感染再拡大で感染防止に向けた制限措置が復活している州もあり、景気回復は早くも腰折れする恐れがある。

6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比480万人増加し、1939年の統計開始以降で最多を記録。失業率も11.1%と、5月の13.3%から改善した。

一方、ニューヨーク連銀が発表する週間経済指標(WEI)によると、6月27日終了週はマイナス7.44と、前週のマイナス7.91からやや改善したものの、依然としてマイナス圏にとどまった。

こうした中、セーフグラフが提供する携帯電話の位置情報分析を基にロイターがまとめたところによると、小売り店の客足がコロナ危機にひんしていた4月上旬以降で初めて下向きに転じた。またウナキャストのデータでも、飲食やジム、美容の各店舗でこれまで戻り基調だった客足の滞りが確認された。

ホームベースの中小企業管理データによると、6月28日終了週の従業員労働時間は25州で縮小。このうち感染者が急増しているアリゾナ州やテキサス州でそれぞれ7%超、5%超落ち込んだ。

オックスフォード・エコノミクスのアナリスト、グレゴリー・ダコ氏は「衛生状況の悪化やそれが景気回復に及ぼす悪影響がこれまで以上に懸念される。移動の自由や防護用品の使用率の低さが夏場の悪化に拍車をかける恐れがある」と指摘した。

移動制限が緩和される中、社会的距離の確保やマスク着用といった対応は個人によってまちまちだ。ロイターの集計によると、米国での新型コロナ感染者は1日、5万人近く増加し、1日当たりの感染者としては過去最多を記録した。特に南部や南西部の州でのクラスター(集団感染)が目立っている。

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、感染拡大を食い止めなければ、1日当たりの感染者数は現在の約2倍の10万人に膨らむ恐れがあると警告する。

ゴールドマン・サックスのアナリストは、米国の人口の半分超に当たる州で当初の経済再開計画の停止や部分的な撤回を余儀なくされていると分析。当該州ではバーやレストランの営業、集会の規模などに制限が設けられているとした。

その上で、ウイルスの流行はほぼ全ての州で拡大しており、現在、経済再開のために推奨される4つの基準を全て満たしているのはバーモント州とニューハンプシャー州だけだと指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中