最新記事

景気

企業決算に見るアメリカ個人消費は堅調 先行きには慎重論も

2019年11月18日(月)10時28分

米国で堅調な個人消費を示す企業決算が相次いでいる。小売り最大手のウォルマートは通期予想を上方修正した。写真は大手百貨店メーシーズの旗艦店。2018年11月22日、ニューヨークで撮影(2019年 ロイター/Stephanie Keith)

米国で堅調な個人消費を示す企業決算が相次いでいる。小売り最大手のウォルマートは通期予想を上方修正。一部の大手銀行や住宅メーカーの決算会見でも消費に明るい見方を示す声が出ている。

米中貿易摩擦を受けて景気の先行きを悲観する企業は少なくないが、国内総生産(GDP)の3分の2以上を占める個人消費は総じて底堅いようだ。

商務省が15日発表した10月の小売売上高は前月比0.3%増と、前月の落ち込みから持ち直した。高額商品への支出を切り詰める動きはみられるが、ストラテジストの間では、個人消費が引き続き米経済を下支えするとの見方が多い。

アライ・インベスト(ノースカラロライナ州)のチーフ・インベストメント・ストラテジスト、リンゼー・ベル氏は「雇用は売り手市場だ」と指摘。金利低下を受けて消費が増えており、来年上半期も好調な個人消費が続くとの見通しを示した。

ウォルマートのブレット・ビッグス最高財務責任者(CFO)も、ロイターとのインタビューで、書き入れ時の年末商戦に向け消費支出は堅調だと発言。

住宅建設大手のレナー、クレジットカード大手のマスターカード、高級皮革ブランドのタペストリー(旧コーチ)も、決算会見で個人消費が健全だとの見方を示唆した。

金融大手JPモルガン・チェースのジェニファー・ピープサック最高財務責任者(CFO)は、貿易摩擦を巡る不透明感が投資に悪影響を及ぼしている可能性はあるが、米国の個人消費は「信じがたいほど力強い」と表現。「消費マインドは良好で、個人の信用度も高い」と述べた。

収益見通しは弱気目立つ

ただ、設備投資が縮小し、多くの企業が先行きに慎重な見方を示していることも事実だ。

ネットワーク機器大手シスコシステムズは13日、売上高と利益が予想を下回ると表明。世界経済を巡る不透明感の高まりが、顧客の支出を抑制する要因になっていると指摘した。

アナリストも、今年第4・四半期と来年の企業利益の予想を下方修正。S&P総合500種指数採用企業の第3・四半期決算も、前年比で小幅な減益になる見通しだ。リフィニティブのIBESデータによると、四半期決算が減益となるのは2016年以来。

リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズのリチャード・バーンスタイン最高経営責任者(CEO)は、現時点で個人消費に頼るのは危険だとし「(企業業績が2四半期連続で減益となる)業績リセッションに陥れば、雇用情勢が変わり始める」との見方を示した。

年末商戦が近づくにつれ、個人消費の動向に注目する投資家は増えるとみられる。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のエコノミストは15日付のリポートで、先行きへの懸念は根強いが「全体として、今の消費マインドは秋口より良好だ」との見方を示した。

[ニューヨーク 15日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中