最新記事

日本経済

「暑い!」8月猛暑で景気4カ月ぶり上昇 一方で先行きは増税不安で悪化

2019年9月9日(月)15時52分

内閣府が発表した8月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが42.8で、前月比1.6ポイント上昇し、4カ月ぶりの上昇となった。写真は都内で昨年10月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

内閣府が9日に発表した8月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが42.8で、前月比1.6ポイント上昇し、4カ月ぶりの上昇となった。7月の長梅雨の反動などが寄与したが、増税前の駆け込み需要は期待ほど盛り上がっていない。また、来月から実際に消費税が引き上げられることへの不安感や米中・日韓関係の悪化が懸念材料となり、先行きの景況感は悪化している。

企業動向関連と雇用関連では、前月から景況感が低下。米中摩擦による受注悪化などが影響した。企業からは「受注状況は分野によっては米中摩擦の影響で、減少に転じているものもある」(北陸・プラスチック製品製造業)との声があった。また、「中国向け輸出がストップし、出荷などが落ちている企業があり、採用活動が停止している」(甲信越・職業安定所)といった指摘も寄せられた。

他方、家計動向関連は上昇。7月の長梅雨の反動に加え、8月に入ってからの猛暑も影響し、「エアコンなど夏物商材が好調」(北陸・家電量販店)という。

一方、元安や米中摩擦の影響で「中国人ツーリストの購買力が落ちている」(南関東・家電量販店)といった声があるほか、「韓国の観光客でにぎわっていた商店街では売り上げが伸びていない」(九州・商店街)との指摘もあり、日韓の関係悪化も影を落としている。

消費税率の引き上げ前の客足については、「駆け込み需要を期待していたが、4月以降の来客数と変わらない」(南関東・乗用車販売店)など、全国的に盛り上がりはみられない。

2─3カ月先を見る先行き判断DIは39.7で、前月比4.6ポイント低下。前回消費税率引き上げが実施された1カ月前の14年3月以来の低水準。2カ月連続の低下となった。家計動向、企業動向ともに低下した。

実際に消費税率が引き上げられた後の落ち込みを懸念し、「増税前の電子決済の還元施策の刺激で多少は客が増えつつあるが、良くなると見込めるほどではない」(甲信越・スーパー)といった見方や、「日韓関係悪化、米中貿易摩擦、円高傾向などの不安要素が日を追うごとにエスカレートしている」(民間職業紹介機関)といった指摘がある。

内閣府は、景気ウオッチャー調査の判断の表現を「このところ回復に弱い動きがみられる」で据え置いた。

先行きについては「消費税率引き上げや海外情勢などに対する懸念が見られる」とした。

(中川泉 )

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20190917issue_cover200.jpg
※9月17日号(9月10日発売)は、「顔認証の最前線」特集。生活を安全で便利にする新ツールか、独裁政権の道具か――。日常生活からビジネス、安全保障まで、日本人が知らない顔認証技術のメリットとリスクを徹底レポート。顔認証の最先端を行く中国の語られざる側面も明かす。



20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標と企業決算に注目

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中