コラム

共和党のバイデン批判が、激しいばかりで空疎なものになる訳(パックン)

2021年05月18日(火)18時43分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
バイデン大統領と共和党(風刺画)

©2021 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<ルーズベルト政権を手本にするバイデンは、ニューディール政策も顔負けの財政出動を提案したが、共和党の歯切れは悪い?>

20世紀アメリカを代表する画家ノーマン・ロックウェルの自画像には自分の後ろ姿、鏡に映っている本当の顔、そしてキャンバス上の「みんなに見せたい顔」と、3つの「自分」が映っている。風刺画家は今回、Apologies to Rockwel(l ロックウェルさん、ごめん!)と巨匠に断りを入れてからその傑作を思いっ切りパクっている。

ロックウェルは実物より格好良く見せようと自分の肖像を「盛った」ことを認めているが、ジョー(JOE)ことバイデン大統領も自分をフランクリン・ルーズベルト(FDR)に似せてというか、化けさせて描いている。吉野家風にいうと「特盛」だ。

が、2人の大統領が実際に似ているのは間違いない。顔じゃなく、状況と政策が。世界恐慌中に就任したルーズベルトと、コロナ禍の中で就任したバイデンはどちらも大規模な公共事業で雇用を創出しながら、インフラ、教育、行政などの改革を進める「大きな政府」を目指すタイプ。

偶然ではない。バイデンは選挙中にもルーズベルト政権を手本にすると語っていた。もちろん、最初の100日で76もの法案を通した「師匠」にはバイデンの政治力も指導力もかなわないが、ルーズベルトを超える分野はある。

「大きな政府」を批判できない共和党

それは支出額! ルーズベルトのニューディール政策は全部で約420 億ドル(現在の価値で約8566億ドル)かかったとされる。一方、バイデンは100日で既に6兆ドル分もの財政出動を提案している。お手本の約7倍もの大金だ。大きけりゃいいってわけじゃないけど。

2人のもう1つの共通点はGOP(Grand Old Party=共和党)から嫌われていること。大きな政府も、大きな支出も毛嫌いする共和党だが、今回は反論の材料に少し困っているようだ。

トランプ政権も莫大な財政赤字を生んだが、当時与党だった共和党は黙り込んだ。今わめき出すと、偽善者に見えかねない。その上、貧困救済やインフラ投資、法人税増税など、バイデン政策の内容は国民から広く支持されている。

そういう事情だから「美術には詳しくないが、嫌いなものは嫌い!(I don't know much about art...but I know what I hate!)」という、漠然とした批判で終わっているのかもしれない。普通、このフレーズは最後にlike(好き)を使うのだが、ここではhate(嫌い)とすることで具体的な理由もなしに嫌がっている様子を表現している。

それでも、共和党の懸念は理解できる。ルーズベルトは大統領選に4選し、約80年たっても偉大な大統領としてたたえられている。バイデンがそこまで似せて描けるなら、野党にとっては肖像画というより地獄絵図だ。

20210928issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月28日号(9月22日発売)は「予防医療の時代」特集。「治す」から「防ぐ」へ――ゲノム検診で異常検知し、マイクロRNA解析が癌を超早期に発見。極小ナノマシンが細胞診断する日も近い


プロフィール

ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

ニュース速報

ビジネス

南欧の銀行は気候変動に脆弱、融資先にリスク=ECB

ワールド

タイ、外国人観光客の受け入れを11月に延期 バンコ

ビジネス

中国スマホ国内出荷、8月は前年比9.9%減=政府系

ワールド

英国と韓国、新型コロナワクチンのスワップで合意

MAGAZINE

特集:予防医療の時代

2021年9月28日号(9/22発売)

病気は「治す」から「防ぐ」へ......ゲノム検診で異常検知し超極小「ナノマシン」が細胞診断する日も近い

人気ランキング

  • 1

    男性の平均寿命トップから36位へ 沖縄があっという間に「短命県」になったシンプルな理由

  • 2

    「携帯キャリアと正反対」 ネットフリックスが幽霊会員を退会させる狙いとは?

  • 3

    韓国の技術革新力が世界5位に──K ポップの活躍も要因。日本の順位は?

  • 4

    生放送の天気予報に堂々と映り込む犬「おやつが欲し…

  • 5

    サイを逆さ吊りにする実験結果がイグノーベル賞を受賞

  • 6

    中国版リーマン・ショック、「恒大」破綻危機で世界…

  • 7

    経済依存してきた中国に、真っ向から歯向かうオース…

  • 8

    米GMと韓国LG、相次ぐEVバッテリー発火事故で「仮面夫…

  • 9

    マスクなしでスーパーを埋め尽くす「買い物テロ」に…

  • 10

    ハリケーン被害:洪水で流れてきたワニに庭で食われる

  • 1

    「携帯キャリアと正反対」 ネットフリックスが幽霊会員を退会させる狙いとは?

  • 2

    家族を優しく守ってくれる「吠えない」大型犬

  • 3

    27歳で早期リタイアできるだけの資産を形成した私の「仕事とお金」遍歴

  • 4

    7年前にソーラーパネル設置を断念した僕の後悔

  • 5

    ハリケーン被害:洪水で流れてきたワニに庭で食われる

  • 6

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目…

  • 7

    男性の平均寿命トップから36位へ 沖縄があっという…

  • 8

    【9.11】20年目の「新事実」テロ実行犯の2人は愛し合…

  • 9

    国石「ヒスイ」が生まれる東西日本の境界を歩く

  • 10

    韓国の技術革新力が世界5位に──K ポップの活躍も要因…

  • 1

    「レオ様」激似の顔を持つ男...その数奇な運命と、たどり着いた境地

  • 2

    中国の衛星が3月に軌道上で突然分解......その理由がようやくわかった

  • 3

    来日25年のフランス人が気付いた、日本の「あり得ない」裏の顔

  • 4

    失敗学の研究者が見た、日本人の「ゼロリスク」信奉

  • 5

    タリバンがブラックホークを操縦する異常事態、しか…

  • 6

    小さな子供がいる家庭にぴったり! 「優しい」性格が…

  • 7

    エヴァンゲリオン、美しく静かなラスト...ファンもこ…

  • 8

    無人島にたどり着いた日本人たちがたらふく味わった「…

  • 9

    動画サイトの視聴で広がる集団疾患、世界の若年層で…

  • 10

    330匹の猫が不審死...原因はペットフードか 重症猫…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中