コラム

中国で日本製ゲームアプリが大人気、「カエルをもって知る親の恩」?

2018年02月21日(水)11時10分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/唐辛子(コラムニスト)

中国人は「旅かえる」のカエルをわが子のように考えている (c)2018 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<中国で日本の無料ゲームアプリ「旅かえる」が大人気に。カエルを育てることで若者たちが親の気持ちを理解できるようになったと言うのだが>

「わが子よ! 一晩中ずっと本を読んでいると目が悪くなるよ」「わが子からの旅先の写真だよ! 恋人ができたらしいわ」

たった一晩のうちに、私のSNS微信(WeChat)のアカウントはこんな投稿ばかりになった。「わが子」とはカエルのこと。カエルは「旅かえる」という日本の会社が開発した携帯用ゲームのキャラクター。庭先のクローバーを集めてお弁当を買ってあげて、支度をしたらカエルは旅に出る。旅先の名産や思い出の写真を持ち帰り、家にいるときは読書にふける。正直これ以上つまらないゲームなんてないように思えるが、どういうわけか中国の無料アプリランキングの1位となった。

どうしてブームとなっているのか、中国の専門家は現代社会の若者の孤独さから、日本の箱庭文化や枯山水、禅や俳句に至るまで、いろんな視点で大変真面目に分析している。また、親孝行は中国人の最も大切な伝統なので、有力な説として「カエルをもって知る親の恩」がある。

ある中国の週刊誌も、このカエルを育ててから、若者たちが親の気持ちが理解できるようになったと書いている。カエルが家にこもっているときは、外に出て友達をつくって遊んでほしいが、本当に旅に出て連絡がないと、家出かなあと心配になる。親の気持ちと一緒なのだ。

というわけで、中国のメディアはとうとう日本人開発者に直接インタビューした。中国の若者は旅かえるによって親の気持ちが分かった、という話をしたら、日本人の女性開発者は「違います、あのカエルは息子じゃなくて旦那さんですよ。日本の場合、旦那さんはよく出張をして、そのたびにお土産や出張先の写真などを持ち帰るんです」と答えた。

ああ! 胸が張り裂けそうだ! 中国人ユーザーたちは悲しくなった。何だって? あの萌え萌えのカエルちゃんはかわいいわが子じゃなくて、男臭い旦那さんのことだったって? これは許せない、さっさとアンインストールしようっと。

まあ、そのうち旅かえる人気は消えるかもしれない。今やSNSの新浪微博ユーザーは7億人で微信は9億。1人が面白そうな投稿をしたら、周りも好奇心をそそられドミノ倒しになりやすい。一種のバンドワゴン効果にすぎないのだ。

【ポイント】
早点回来!

早く帰って来てね!

バンドワゴン効果
ある選択を支持する人が多ければ多いほど、その選択が正しいと思い込むようになる心理現象

本誌2018年2月27日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story