コラム

トランプの嘘が鬼のようにてんこ盛りだった米共和党大会(パックン)

2020年09月03日(木)15時40分
トランプの嘘が鬼のようにてんこ盛りだった米共和党大会(パックン)

トランプの親族が次々に登壇する異常な共和党大会となった Carlos Barria-REUTERS

<大統領選挙に向けてトランプ大統領が指名受諾演説をした共和党の全国党大会はこれまでの実績からコロナ対策まで、嘘のオンパレード>

日本語は面白い。同じ表現でもイントネーションによって微妙に意味が変わる。例えば「ウソだ」。頭にアクセントをつけて「嘘だ!」と、真実と異なる発言などを指摘するときによく使う。一方、アクセントを「だ」につけて、語尾を少し伸ばすと「ウソだ~」になり、物事に対しての驚きを示すときに便利。前者は「信じてはいけない!」という偽りの情報に、後者は「信じられない!」という非常識な光景に用いるのだ。というか、なんで僕が日本人の読者に日本語を解説しているんだろう......。

とにかく、僕はドナルド・トランプを正式に大統領候補として指名した8月の共和党大会を見ながらこの2通りの「ウソだ」を繰り返して口に出していた。

まずは4日間にわたって開かれた党大会に登場した嘘を紹介したいが、その選択肢は豊富:CNNによると、共和党大会には初日だけで民主党大会の4日分以上のウソが披露された!だからここで僕が選んだトップ4だけを取り上げることにしよう。オンラインとはいえ、スペースには限りがあるから。

1)「トランプは公約を全部守った」。ウソだ! ワシントン・ポスト紙のまとめによると、前回の大統領選中にトランプが挙げた最も重要な公約60個のうち、結局守ったのは35%だけ。これで「全部」というなら、僕も米政府に課税された額の35%だけ納税しようかな。

2)「民主党は郊外を廃止する予定だ」。ウソだ! というか、意味わからない。公害ならなくしたいでしょうけど。「(民主党大統領候補の)ジョー・バイデンは〇〇を廃止する予定だ」というウソは前からトランプの定番レトリック。以前に廃止対象としたのは、警察や刑務所など。でも、僕のお気に入りは、バイデンの環境対策は「石油や天然ガスの産業を廃止し」さらに「窓もなくなる」という主張。どういうことだろう? バイデンが当選したら、住宅やビルの窓がすべて壁に変わるということでしょうか。もちろん、トランプが「ほぼ完成した」と言い張るメキシコとの国境の「壁」と同じぐらいの空想だ。

一番ひどかったウソは......

3)「オバマ政権下より、トランプ政権下で景気がいい。」ウソだ! コロナの前までの、トランプ政権の3年間はオバマ政権の最後の3年よりGDPの成長率が低いし、新規雇用数も少ない。確かに、景気は悪くなかったが、オバマがリーマンショックから立て直した強い経済を受け継いだだけなのではないか。

トランプは前権下でできた功績を自分のお手柄かのように話すことも常習犯だ。アメリカが世界一のエネルギー産出国に躍り出たことも、CO2を削減できたことも、民間宇宙開発プログラムを始めたこともその代表例。または、退役軍人が受ける医療の選択肢を増やす法案を通したという自慢。これも過去に150回以上繰り返しているウソだ。しかも、見事にばれている! この前、記者会見で「退役軍人チョイス法を通したとおっしゃいましたが、それは2014年に可決されたもの。間違った発言ですが......」と記者に指摘されたトランプは......夫の不倫が発覚した女優がよく使うような手段に走った!「ありがとうございます」と、その場を立ち去っただけ。そして、数日後に党大会の舞台でまた同じウソをついた。

4)最後に、数多くあったウソの中で一番ひどかったもの。それはコロナ対策についての複数の発言だ。新型コロナウィルスが登場したらトランプはすぐ脅威を認知し決断したとか、たちまち緊急事態宣言を発令し莫大な予算を充てたとか、防護服や人工呼吸器を確保し世界最高の検査制度を実施したとか。党大会でこの夢物語が語られたが、どの主張も事実に反する。WHOが緊急事態宣言を出してからトランプは6週間も待った。疾病対策センター(CDC)が医療用品の予算や検査制度の強化を求めても大統領は抵抗した。だが、僕がいちいち訂正するよりも、トランプのコロナ対策の結果が十分な反論をなすだろう。もしくは600万人を超える感染者に聞いたら、トランプのやり方に異議を唱えるだろう。まあ、そのなかでも文句も何も言わない人は20万人近くいるだろう。19万人はコロナですでに亡くなっているからね。

続いては、「ウソだ~」と驚いた党大会の非常識なシーンを紹介しよう。これも、3つだけに絞ろう。集中力にも限りがあるから。

<関連記事:トランプはもう負けている? 共和党大会
<関連記事:トランプ、黒人差別デモに発砲した白人少年は「正当防衛」

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

ニュース速報

ビジネス

アングル:昨年不振のバリュー株復活へ、米景気回復時

ビジネス

アングル:人民元堅調、不安視する当局に「レッドライ

ビジネス

全米ライフル協会、破産法第11条の適用申請 リスト

ビジネス

英首相、和歌山沖定置網のクジラ捕獲に懸念=テレグラ

MAGAZINE

特集:トランプは終わらない

2021年1月19日号(1/13発売)

全世界があきれる米議会占拠事件をあおったトランプがこれからも影響力を失わない理由

人気ランキング

  • 1

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?

  • 2

    七五三にしか見えない日本の成人式を嘆く

  • 3

    「再選を阻止せよ」浜田宏一・安倍政権元内閣参与がトランプに三行半

  • 4

    マジックマッシュルームを静脈注射した男性が多臓器…

  • 5

    暴君・始皇帝を賛美する中国ドラマ──独裁国家を待ち…

  • 6

    菅首相、1分に1回以上口にする「ある口癖」 言葉が心に…

  • 7

    「#ジョンインちゃん、ごめんね」 養父母による虐待死…

  • 8

    窮地の文在寅に金正恩から「反日同盟」の危険な誘惑

  • 9

    メルケル独首相が、ツイッターのトランプアカウント…

  • 10

    新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタ…

  • 1

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?

  • 2

    マジックマッシュルームを静脈注射した男性が多臓器不全、血液中でキノコが育っていた

  • 3

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)

  • 4

    無邪気だったアメリカ人はトランプの暴挙を予想でき…

  • 5

    「生意気な青二才」「お前が言うな」批判も浴びた金…

  • 6

    トランプのSNSアカウント停止に、アメリカ国内で異論…

  • 7

    上院も制したアメリカの民主党。それでも「ブルーウ…

  • 8

    「再選を阻止せよ」浜田宏一・安倍政権元内閣参与が…

  • 9

    世界で「嫌われる国」中国が好きな国、嫌いな国は?

  • 10

    七五三にしか見えない日本の成人式を嘆く

  • 1

    「小さな幽霊」不法出稼ぎタイ人、韓国で数百人が死亡 

  • 2

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?

  • 3

    脳に侵入する「殺人アメーバ」が地球温暖化により北上しているおそれ

  • 4

    マジックマッシュルームを静脈注射した男性が多臓器…

  • 5

    世界で「嫌われる国」中国が好きな国、嫌いな国は?

  • 6

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(…

  • 7

    台湾最新のステルス哨戒艦、中国は「ヘリ1機で沈没さ…

  • 8

    北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ......2…

  • 9

    中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった

  • 10

    無邪気だったアメリカ人はトランプの暴挙を予想でき…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

2021年 最新 証券会社ランキング 投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!