コラム

他国を「くその穴」と呼ぶ大統領って......

2018年01月18日(木)16時45分
他国を「くその穴」と呼ぶ大統領って......

歴代大統領は憧れの対象なのに Joshua Roberts-REUTERS

<高い品格を求められるアメリカ大統領が、絶対に使うべきでない汚い言葉を使った......子供たちにどう説明しよう?>

あなたは何でもできる! 何にでもなれる! どんな夢をも達成できる! 目指したい人を決めて、頑張りなさい!

そう言いながらアメリカの先生や親たちは、成功した有名人やビジネスパーソン、歴史上の人物などを子供に見せて、憧れをかき立てる。僕の時代はカール・ルイス、ヘンリー・フォード、トーマス・エジソンなどがよく使われた。 

そしてもう1人、欠かせないのが大統領。「あなただって、大統領になれるよ」と励まされるのがアメリカの定番だ。ワシントン、リンカーン、ルーズベルト、ケネディなどの歴代大統領だけではなく、その時代時代の大統領も憧れの対象として常に挙げられていた。

だから大人たちは、大統領の演説や海外遠征先からの中継、専用機エアフォースワンから手を振る姿などを子供に見せたくて、すぐにテレビをつけるようにしていた。その人の政策に賛成していなくても、話し方や立ち振る舞い、生き方は尊敬される憧れの的だった。

今はどうだろう。

先日、テレビ番組で「shithole」の解説を頼まれ、視聴者になじみのない単語を精一杯説明した。好きな番組に出演できて嬉しいはずなのだが、同時につらい仕事でもあった。その理由は2つ。まず「shit=くそ」の「hole=穴」というキーワードだ。「簡易トイレの下の肥溜め」や「尻の穴」、つまり最低の汚い場所を指すとても下品な表現を、テレビで自分の口から出すことに違和感がある。母親が見ていたら、僕の口を石鹸で洗おうとすることだろう。でもそれより、解説したのがトランプ大統領の発言であることが、想像を絶するほど悲しい事態だった。

この単語は、酔っぱらった男子大学生がけんか中に使ったりすることはあるかもしれない。しかし基本的に、礼儀正しい常識人が日常会話で言ってはならない言葉。早い時間帯のテレビやラジオで使ってはならない。新聞などに載せてはならない。子供が絶対に口にしてはならない。

でも大統領が使った(*文末に筆者注)。

「お父さん、shitholeってどういう意味?」と子供に質問されたら、と考えると頭が痛い。好ましくない単語について質問されたとしても、普段は冷静に意味を説明する。そして使わないように指示した上で、どこで聞いたのかを確認する。テレビ番組だったら、もう見せないようにする。友達だったら、向こうの親に連絡して注意してもらうようにする。大統領だったら......。

困った! 「大統領だったら」という設定は考えたことがない!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

ニュース速報

ワールド

焦点:イタリア橋崩落、的外れなEU批判が覆い隠す財

ビジネス

焦点:中国「金融難民」の怒り爆発、P2P業者の破綻

ワールド

トルコの信用格付けを相次ぎ格下げ、S&Pは「B+」

ワールド

トルコ裁判所、米国人牧師の釈放認めず リラ4%安

MAGAZINE

特集:奇才モーリー・ロバートソンの国際情勢入門

2018-8・14号(8/ 7発売)

日本とアメリカ、世界の知られざる針路は── 異能のジャーナリストによるホンネの国際情勢解説

※次号は8/21(火)発売となります。

人気ランキング

  • 1

    自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから」

  • 2

    富裕層しかいないはずのファーストクラスで多発する備品泥棒

  • 3

    日本の空港スタッフのショッキングな動画が拡散

  • 4

    ISISの「奴隷」にされた少女が、避難先のドイツで元…

  • 5

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種…

  • 6

    「アルツハイマー病は脳だけに起因する病気ではない…

  • 7

    ジェット旅客機の死亡事故ゼロ:空の旅を安全にした…

  • 8

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、…

  • 9

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 10

    厳罰に処せられる「ISISの外国人妻」たち

  • 1

    自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから」

  • 2

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、遊べばいい

  • 3

    富裕層しかいないはずのファーストクラスで多発する備品泥棒

  • 4

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 5

    日本の空港スタッフのショッキングな動画が拡散

  • 6

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 7

    死後世界も霊魂もないなら何をしてもいい──を実行し…

  • 8

    ISISの「奴隷」にされた少女が、避難先のドイツで元…

  • 9

    「俺たちが独り身の理由」、米版2ちゃんで聞いた結果

  • 10

    サーモンを愛する「寿司男」から1.7mのサナダムシ発見

  • 1

    自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから」

  • 2

    アマゾンのジャングルに1人暮らす文明と接触のない部族の映像を初公開

  • 3

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

  • 4

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 5

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 6

    インドの性犯罪者が野放しになる訳

  • 7

    怒りの僧侶、高野山への外国人観光客にナナメ上の対…

  • 8

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 9

    イルカとクジラのハイブリッドを確認、世界初

  • 10

    実在した...アレクサに怒鳴る男 絶対にお断りした方…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
メディアプロモーション局アルバイト募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

特別編集 ジュラシックパークシリーズ完全ガイド

絶賛発売中!