コラム

コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる

2021年02月12日(金)15時00分

しかし、人々は、ビットコインはバブルだと言うが、経済が悪いのにビットコインがバブルになっているのはおかしい、とは言わない。なぜなら、もちろんビットコインの値動きと経済の良し悪しは無関係だと誰もが分かっているからである。

そして、ビットコインと株は同類で、ビットコインと同様に株は経済とは無関係に動くのである。

株式とビットコインは、共に資産であり、投資対象である。一方、経済は日々の生活で、日々の稼ぎ、所得の世界である。だから、ビットコインと経済が別物なのと全く同様に、株式市場と経済は別物だ。

人間の欲望が市場を動かす

では、ビットコインや株が経済に連動しないのであれば、ビットコインや株を動かすのは何か。人間の欲望である。投資家の期待である。もっと上がるかも、という期待で投資家はビットコインや株を買う。買うから上がる。株価の上昇とは投資家たちの期待の実現、期待の自己実現なのである。

従って、株価が上がっているということは、投資家たちの欲望、奇麗に言えば、期待値が上昇していることを示している。株がもっと上がるかも、という投資家の期待はどこから来るのか。その期待を動かすものが、株価を動かすのである。

経済が良くなるから株価も上がるだろう、だから株を買っておこう、と大多数の投資家が思い、そして買えば、株価は上がる。このときは、確かに、経済の見通しと株価の動きは連動する。

しかし逆に言えば、経済が良くなるから、という以外の理由で、投資家の多数派が株価が上がると思えば、彼らは株を買い、そして株価は上がるのである。経済が良くなることが株価上昇の原因になることは、投資家の期待を動かす無数の要因の中の1つにすぎないのである。

では、今、なぜ株が上がっているのか。なぜ投資家たちは、株価が上がるのではないか、と期待しているのか。

その理由は金融緩和であり、財政出動である。そして、コロナがひどくなればなるほど、金融はさらに緩和され、財政はさらに大盤振る舞いをするから、むしろコロナが悪くなればなるほど、投資家の欲望は膨らみ、株を買いに殺到する。

アメリカでは、投資アプリ「ロビンフッド」を利用して、コロナ危機で初めて株を買い始めた個人投資家たちがいる。彼らは、ジョー・バイデン大統領が新たに配る1人2000ドルの給付金で株を買うだろうといわれている。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナの兵器基地への攻撃を強化へ=国防

ワールド

中国の国防費拡大を懸念、台湾への挑発増す=米太平洋

ビジネス

英利下げはまだ先、インフレ巡る悪材料なくても=ピル

ビジネス

ダイハツ社長、開発の早期再開目指す意向 再発防止前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story