コラム

老後資金二千万円問題 「悪いのは誰か」

2019年06月17日(月)10時15分

つまり、真犯人は視聴者であり、有権者なのだ。国民といっても、我々、と言ってもよい。

自称インテリたちが不都合な真実に騒ぎ立てるやつらが悪い、と批判しているのは、自分自身、国民全体なのだ。

インテリたちが国民、というときには、自分を除く国民、という意味だ、という皮肉はおおむね正しいが、だからこそ、トランプの当選も、ブレクジットも事前に数字が出ていたのに、結果を見て始めて驚くのだ。つまり、おろかな国民から除かれた人々、除いた自分たちこそが、もっとも愚かなことに、事実を知らなかったのであり、真実を最後に知って驚いているのである。しかも、その驚きの原因は、自分たちを除く国民たちが間違っているから、と結論付ける究極の愚かな結末を自分で自慢げに分析して聞かせるのである。

二千万円必要だ、という真実に目を背けてきた、という真実に向き合う必要があるのは、自称インテリたちなのである。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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