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シリーズ日本再発見

『ゴースト・オブ・ツシマ』でサムライ映画の世界を戦い抜け

Lots of Fighting Fun but Not Kurosawa

2020年08月11日(火)17時00分
アンドルー・ウェーレン

サムライの生活を追体験するのもこのゲームの楽しみだ。それを可能にしているのが、緻密な視覚表現だ。鎧(よろい)や笠(かさ)や鉢巻や刀のさやなどさまざまな選択肢を組み合わせられる。この種の自由さはゲームプレー上のちょっとした要素(例えば景色のいいところに出ると和歌を詠めるとか)にも及び、ゲームの雰囲気づくりに寄与している。

一方で、映画監督の黒澤明にちなんで名付けられた「黒澤モード」にはがっかりだ。古い映画のようなモノクロ画面でプレーできるモードなのだが、色彩をグレースケールに置き換えただけ。黒澤の名にふさわしいとは言えない。

本作の無数の戦闘シーンの映像美は、そのお手本となった数々のサムライ映画を思わせる。とはいえ、1962年の映画『切腹』(小林正樹監督)にある、静かな墓場から決闘の場である風吹きすさぶ草原への場面転換のような静と動の対比は見られない。本作の草原は鳥や雷、舞い散るわらなどでせわしない。

黒澤の『乱』や『蜘蛛巣城』では、シェークスピアの悲劇を下敷きにした物語が、自らの犯した過ちに苦しむ武士たちの苦悶の表情を通して語られる。だが本作は、キャラクターを前面に出し、境井と伯父の関係を描いてはいるものの、劇として同じ高みに届いているとは言えない。

サムライ映画と相通じる視覚表現が見られる一方で、まったく同じにはなれないのには理由がある。映画であれば、サムライの戦う動きは正確で素早く完結する。だが『ゴースト・オブ・ツシマ』では、倒すべき敵も拾い集めなければならないアイテムも多過ぎて際限がないのだ。

<本誌2020年8月4日号掲載>

<関連記事:米出版界を震撼させる楳図かずおの傑作ホラー『漂流教室』

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