コラム

ジェンダー平等という黒船に気付かず日本政治は「ムラ」に閉じこもる

2021年04月06日(火)19時35分

菅内閣発足時の女性閣僚は2人(2020年9月)Yoshikazu Tsuno/Pool-REUTERS

<女性の政治参加で、日本よりも下位の国はカタール、ナイジェリア、オマーン、イラン、ブルネイ、クウェート、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツだけ。森元首相の問題発言は、「ムラ」の価値観に閉じこもる日本政治の世界とのズレっぷりを図らずも露呈した>

3月31日、世界経済フォーラムによる恒例の「グローバル・ジェンダーギャップ・リポート2021」が公表された。日本の総合順位は156カ国中120位。今回も安定した低空飛行を続けている日本だが、特に「政治参加」の分野では147位と最下位集団に位置していることが目につく。

日本よりも下位の国は、カタール、ナイジェリア、オマーン、イラン、ブルネイ、クウェート、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツだけ。その多くはイスラム教国だ。それぞれの国にはそれぞれの事情があろうが、少なくとも日本は女性の政治参加という点で世界最下位グループにいると考えられていることは意識するべきだろう。

これに対して、政治参加上位3カ国はアイスランド、フィンランド、ノルウェーという北欧諸国。いずれも国のトップは、カトリーン・ヤコブスドッティル首相(45)、サンナ・マリン首相(35)、エルナ・ソルベルグ首相(60)という女性が占めている。

これら世界の女性政治家について、ジェンダー平等の観点から「女性」であることや、(あえて年齢を記したが)政治家としての経験あるいは激務に耐える気力や体力があるかを問う観点から「年齢」が議論となることもある。しかし、そうした実質的な議論と、ジェンダー平等を実現するための営為が積み重なってきた政治的な文脈を無視して、単に「女性だから」とか「年だから」と決めつけるのは次元が全く異なる。

世界には、米国のカマラ・ハリス副大統領(56)、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(66)、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(62)、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(40)、デンマークのメッテ・フリデリクセン首相(43)など、老若を問わず多様な、そして実力のある女性政治家がいる。そうした政治家に対して、例えば「女性だからダメだ」というような議論は成り立たない。「メルケルは対中融和路線が見え隠れするのでダメだ」とする批判は政治的議論として成り立つが、「メルケルはダメだ、なぜなら女性だからだ」という批判は公的な議論として成立する余地はない。

ところが、日本で最近問題となったのは、「女性だから」「年だから」という観点からの政治的発言だった。

プロフィール

北島 純

社会情報⼤学院⼤学特任教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。国会議員政策秘書、駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在BERC(経営倫理実践研究センター)主任研究員を兼務。専⾨は戦略的パートナーシップ、情報戦略、コンプライアンス。著作に『解説 外国公務員贈賄罪』(中央経済社)、論文に「グローバル広報とポリティカル・コンプライアンス」(「社会情報研究」第2巻1号)などがある。
Twitter: @kitajimajun

ニュース速報

ビジネス

東南アジア配車大手グラブ、SPACと合併 過去最大

ビジネス

独ZEW景気期待指数、4月は70.7 封鎖懸念で予

ワールド

米国は台湾巡る「火遊び」やめよ、中国外務省が米指針

ワールド

ロが米軍艦派遣に警告、クリミアから離れているのが「

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

2021年4月20日号(4/13発売)

コロナを抑え込んだ中国デジタル監視の実態。台湾・韓国にも遅れた日本が今すべきこと

人気ランキング

  • 1

    ロケット砲で80人以上が死亡、200人以上が行方不明か 内戦の危機迫るミャンマー情勢

  • 2

    「日本人なら中国人の3分の1で使える」 クールジャパンどころではないアニメ業界、中国が才能ある人材爆買い

  • 3

    中国製ワクチン、輸出量は既に1億1500万回分だが......

  • 4

    ギネスが認めた「世界最高齢の総務部員」 勤続65年、9…

  • 5

    韓国ソウル、マンション平均価格が9億ウォン突破 全…

  • 6

    【ミャンマー現地ルポ】デモ取締りの警察官に警棒で…

  • 7

    ハリー&メーガンは? 黒い服にタイツ...フィリップ殿…

  • 8

    ヘンリー王子の葬儀参列を妨げる壁 「メーガンは彼の…

  • 9

    日本の対ミャンマー政策はどこで間違ったのか 世界…

  • 10

    テスラに見る株式市場の先見性、知っておくべき歴史…

  • 1

    太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

  • 2

    カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座も危うい

  • 3

    硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

  • 4

    アマゾンに慣れきった私たちに、スエズ運河の座礁事…

  • 5

    緑豊かな森林が枯死する「ゴーストフォレスト」が米…

  • 6

    北米からシカの狂牛病=狂鹿病が、世界に広がる......

  • 7

    洪水でクモ大量出現、世界で最も危険な殺人グモも:…

  • 8

    ビットコイン:規制は厳しくなる、クレジットカード…

  • 9

    「パパ活」はドイツでは通用しない 若いだけで女子を…

  • 10

    「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 …

  • 1

    太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

  • 2

    観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス星団を破壊した

  • 3

    国際宇宙ステーションで新種の微生物が発見される

  • 4

    「夜中に甘いものが食べたい!」 欲望に駆られたとき…

  • 5

    30代男性が急速に「オジサン化」するのはなぜ? やり…

  • 6

    EVはもうすぐ時代遅れに? 「エンジンのまま完全カー…

  • 7

    孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」…

  • 8

    ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」…

  • 9

    カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座…

  • 10

    硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中