コラム

中国の『隠れた手』にがんじがらめにされるドイツ メルケル首相は媚中派路線を転換できるのか

2020年07月28日(火)11時55分

16年、産業用ロボット世界大手の独クーカが中国家電大手の美的集団に買収された。これをきっかけに、中国の意図をいぶかる声が強まり、中国の投資を事前にスクリーニングする仕組みが強化された。しかし大企業の"中国依存症"は、もはや手の施しようがないのが現状だ。

メルケル首相は膨大な対米貿易黒字と「軽武装・経済重視」を理由にドナルド・トランプ米大統領との関係は極度に悪化した。イギリスのEU離脱で10%の自動車関税が復活すれば、高級車の重要な輸出先を失う。その上、中国ともケンカを始めるとドイツ経済は完全に失速する。

もちろんメルケル首相には、トランプ政権が主導する中国との「デカップリング(分断)」はそう簡単には進まず、5Gだけでなくビッグデータや人工知能(AI)、遺伝子工学の分野で中国がアメリカに勝利するのではという打算も働いている。

メルケル首相の15年を振り返ると、常に「戦略的」と言うより「戦術的」に動いてきた。EUの輪番制議長国を務める年内いっぱいはEU域内の新型コロナウイルス対策と経済復興を最優先させるだろう。禁じ手だったEU初の大規模な債務共通化に踏み切ったのもそのためだ。

もし対中政策でアングロサクソン連合と歩調をそろえるとしても対米関係の修復が最低限の条件となる。メルケル首相がアメリカやイギリスのように中国と派手な一戦を構える姿を想像するのは極めて難しい。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com

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