コラム

米FRBパウエル議長の再任で、日本はさらに「悪い円安」に苦しめられる

2021年11月30日(火)20時47分

量的緩和策というのはリーマン・ショックに対応するための非常措置であり、いつまでも継続できるものではない。正常化を遅らせれば、問題を先送りすることになり、将来の金融政策の選択肢を狭めてしまう。長引けば長引くほど現実的な弊害も多くなるので、どこかのタイミングで正常化について決断する必要があり、それが今であることは多くの専門家の共通認識である。

世界経済は、量的緩和策によるマネー大量供給の影響が生じていたところに、コロナ後の景気回復期待が重なり、予想以上にインフレが進んでいる。為替市場ではパウエル氏再任の報道を受けて円安が進んだが、これはアメリカの利上げを見越した動きであり、そうなると嫌でも注目されるのが日本の金融政策である。

日本経済はもはや輸出主導型ではなく、円安に弱い構造に変化しており、しかも日本だけが量的緩和策をやめられない状態にある。日銀が量的緩和策を継続すれば、さらなる円安を招く可能性が高まる一方、現状では金利引き上げの弊害が大きく安易な決断はリスクが大きい。このまま円安が進んだ場合、日銀は厳しい選択を迫られるだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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