コラム

コロナショックで加速する経済の大再編──日本と世界はどう変わるのか

2020年03月19日(木)12時19分

世界経済のブロック化はすでに進んでいる NITO100/ISTOCKPHOTO

<新型コロナ問題で加速するグローバル経済の分断。世界が3つのブロックに分かれたとき、日本はどこに組み込まれる?>

新型コロナウイルスの感染が世界的に広がっている。米中は既に貿易戦争とも呼べる状況になっているせいで輸出入は縮小傾向だが、コロナウイルスがそれに拍車を掛けている。今回の感染が終息を迎える頃には、米中の分断がさらに進み、世界経済がブロック化しているかもしれない。

これまでの時代は、アメリカの旺盛な消費が世界経済を支えてきた。アメリカの需要を満たすため、中国が世界の工場として機能し、大量の製品を供給することで経済が成り立っていた。日本もその枠組みの一部を構成しており、日本から中国に輸出された部品の多くは、中国国内で最終製品として組み立てられ、アメリカに再輸出されている。日本の対中貿易額は既に対米貿易額を上回っており、俯瞰的に見た場合、日中はもはや一体の関係といってよい。

2018年における中国の対米輸出額は約5400億ドル(約57兆8000億円)にも達しており、アメリカの輸入総額の21.5%を占める。米中はまさに互恵関係にあったわけだが、その流れを大きく変えたのがトランプ大統領である。

トランプ政権は中国を敵視する政策に方向転換し、中国からの輸入に高関税をかけた。現時点でも交渉は継続中だが、事実上、米中は貿易戦争と言ってよい状況だ。

米国企業は中国からの輸入が不利になった場合、別の国からの輸入に切り換えるか、国内産に切り換えるかの選択を迫られる。アメリカは製造コストが高いので、付加価値が低い製品についてはメキシコなど中南米からの輸入が有力候補となる。

一方、中国企業はアメリカという最大の顧客を失うので、別の地域への輸出を模索することになる。欧州など先進国向けの輸出は急には増えないので、東南アジアなど経済成長が著しい地域への輸出を強化するはずだ。

中国中心の巨大経済圏

実際はどうなのだろうか。19年1~9月期におけるアメリカの貿易統計を見ると、中国からの輸入が前年同期比で13.5%減少し、メキシコ、ブラジルからの輸入は5.0%増加した。中国からの輸入が不利になった製品については、中南米からの輸入に切り換え、それができないものは自国産を使用した様子が見て取れる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBは6月利下げ、それ以降は極めて慎重に臨むべき

ビジネス

日本の格付け「A」に据え置き、アウトルック「安定的

ビジネス

超長期国債中心に円債積み増し、リスク削減で国内株圧

ビジネス

独総合PMI、4月速報50.5 10カ月ぶりに50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story