コラム

GMOがビットコインの採掘事業に参入。どのくらい儲かるのか試算してみた

2017年12月05日(火)12時50分

写真はイメージです。 undefined undefined-iStock.

<中国勢が圧倒的強さを誇る市場に勝算はあるのか――現在の価格1万ドルが継続し、開発と運用費が300億円程度になるとして収支はこうなる>

IT企業のGMOインターネットがビットコインの採掘事業(マイニング)に乗り出す方針を明らかにした。このところビットコインの価格が急騰していることから、投機について話題になることがほとんどだが、マイニングはコツコツとビットコインを採掘して利益を得るという投機とは正反対のビジネス・モデルである。

そもそもマイニングとはどのような事業なのだろうか、そしてこのタイミングでマイニングに参入したGMOに勝算はあるのだろうか。ビットコインを支える裏方ともいえるマイニング事業について探った。

マイナーの仕事はビットコインの取引をウラで支えること

よく知られているように、ビットコインはインターネット上で流通する仮想通貨である。ビットコインの最大の特徴は、発行元になる国家や中央銀行が存在していないことである。では、ビットコインは誰も集中管理していないのに、なぜ通貨として問題なく利用できるのだろうか。実はこの部分が、マイニング事業を理解するカギとなっている。

ビットコインはブロックチェーンと呼ばれる電子的な台帳のようなものがベースとなっており、誰から誰にいくら渡ったのかというデータはすべてこの電子台帳に書き加えられていく。ビットコインの各取引が正当なものであったのかをコンピュータを使って検証し、それをパスした取引がネットワーク上に分散された台帳に記録されていく仕組みだ。

取引の正当性を検証したり、台帳にデータを書き加える仕事をしているのがマイナー(採掘者)と呼ばれる自由参加の事業者たちである。こうした作業に取り組む人がいることで、政府や中央銀行が存在していなくても、ビットコインは通貨としての機能が保たれるようになっている。

マイナーとしてこの作業に参加するためには、高性能のコンピュータを用意し、暗号化に関する大量の計算を行う必要がある。このためマイニング業務の実施にはかなりのコストがかかる。当然、無報酬では取り組む人がいなくなってしまうので、マイナーが作業を提供した時だけ、ビットコインを報酬として受け取ることができる仕組みになっている。マイニングがビジネスになるのはこうした理由からだ。

ちなみに、ビットコインはもともと発行できるマネーの上限が決められており、新しく通貨を発行できるのは、マイナーが報酬を受け取る時だけである。新しく発行されるビットコインを金になぞらえれば、この仕事は鉱山から金をコツコツと掘り出すイメージに近いのでマイナー(採掘者)と呼ばれるようになった。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界EV販売は年内1700万台に、石油需要はさらに

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story