コラム

「感染者は警察や役所でウイルスを広めよ」コロナまで武器にするイスラム過激派の脅威

2020年06月02日(火)18時30分

コロナウイルス自体を「武器」として利用しようとするケースも既に出ている。チュニジア当局は4月半ば、治安部隊を狙って意図的に咳をしたり、唾を吐きかけたりする「テロを計画していた」として、イスラム過激派と関わりがあるとされる男2人を逮捕した。3月にも在米のムスリム同胞団幹部がエジプトにいる支持者に対し、コロナに感染した者は警察や役所に行き、できるだけ多くの人と握手してウイルスを広め、エジプト当局に報復せよ、と呼び掛ける動画が拡散した。

世界の組織的暴力や紛争のデータを分析しているNGO組織ACLEDは4月末、WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を出した3月11日以降も、紛争は98カ国において増加するか以前と同水準を維持しており、紛争当事者はパンデミックを利用していると言えると報告している。

世界共通の敵はウイルスだけではない。パンデミックの間隙を突いたイスラム過激派の勢力拡大は、コロナ後の世界情勢をより深刻なものとしかねない。世界が直面する現実は今まで以上に厳しい。

<本誌2020年6月9日号掲載>

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2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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