ニュース速報

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル2発発射、今年4回目 平壌の飛行場から

2022年01月17日(月)18時08分

 1月17日、海上保安庁は午前8時54分、北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表した。写真は北朝鮮の旗。ジュネーブで2014年10月撮影(2022年 ロイター/Denis Balibouse)

[東京/ソウル 17日 ロイター] - 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は17日午前、短距離弾道ミサイル(SRBM)とみられる飛翔体2発を平壌の飛行場から発射した。北朝鮮が飛翔体を発射するのは今月に入ってから4回目。日本の海上保安庁によると、すでに海上に落下したとみられる。

平壌の順安飛行場から東方向にSRBM2発が発射されたとみられる。ミサイルは約380キロ飛行し、最高高度は42キロとしている。

海上保安庁は午前8時54分、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表。日本の松野博一官房長官は同日午前の会見で、平和と安全を脅かすものだと強く非難した。

北朝鮮は年初からこれ以外に3回の発射実験を行っており、ミサイル実験としては異例のペース。このうち2回は「極超音速ミサイル」とされるほか、前回の14日は鉄道車両から2発の短距離弾道ミサイル(SRBM)を発射した。

北朝鮮は2017年の中距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験でも同飛行場を使った。

岸信夫防衛相は17日、北朝鮮が弾道ミサイルを同日午前に2発、東方向に発射したと記者団に述べた。詳細は分析中だが、最高高度は約50キロ、通常の軌道なら300キロ程度飛翔し、北朝鮮東海岸付近の日本のEEZ(排他的経済水域)外に落下したと推定されると語った。

北朝鮮による弾道ミサイルなどの度重なる発射は国際社会全体にとってに深刻な課題だとし、強く非難すると語った。日本政府は北朝鮮に対し、大使館ルートを通じて抗議したという。

米インド太平洋軍は、米国や同盟国に直ちに脅威をもたらすものではないが、「不安定化を招く違法な兵器開発の影響が浮き彫りになった」とコメントした。

中国外務省の趙立堅報道官は会見で、「関係当事者に朝鮮半島の全体的な平和と安定に留意するよう求める」と述べた。

韓国外国語大学(ソウル)のメイソン・リッチー教授は、実験のペースや発射場の多様性は、北朝鮮が試射や訓練などに使用できる十分なミサイルを保有していることを示唆しているほか、ミサイル戦力を量的に強調することで抑止力の信頼性を高めるものだと指摘した。

北朝鮮は17年以降、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核兵器の実験は行っていないが、19年に非核化協議が頓挫して以降、一連の新型SRBMを発射している。

北朝鮮はまた、SRBMへの核弾頭搭載を可能にする戦術兵器の開発を推進する意向も表明している。

リッチー教授は「戦術ミサイルが発射されるたびに、制裁がいかに金正恩政権を抑止できていないかや、米国が北朝鮮に短距離ミサイル開発に対する十分な代償を払わせることがどれほどできずにいるかが示されている」と語った。

カーネギー国際平和基金の核政策専門家、チャオ・トン氏は、金総書記は米国との交渉進展を期待しておらず、北朝鮮にミサイル開発を控える理由はないと指摘。北朝鮮に同情し米国に敵意を抱く中国が、発射実験への国際社会の非難を後押しすることはないとの見方から「北朝鮮は、ミサイル開発を進めるには安全な時だととらえるかもしれない」と分析した。

最近のミサイル発射は北朝鮮が、中国との貿易再開の準備を進めているとみられる中で行われている。

中国の貿易関係者は、北朝鮮の列車が16日に北朝鮮との国境に接する中国の町に入ったことを受け、17日にも取引が再開される見込みだと述べた。

梨花大学のリーフ・エリック・イーズリー教授は「このタイミングは、中国が北朝鮮を経済的に支援するとともに、軍事的に協調していることを示している」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低

ビジネス

日本企業の政策保有株「原則ゼロに」、世界の投資家団

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中