ニュース速報

ワールド

日米首脳会談、台湾海峡の平和と安定の重要性で一致と菅首相

2021年04月17日(土)08時28分

4月17日 米ワシントンを訪問中の菅義偉首相はバイデン大統領と会談後にそろって会見し、インド太平洋地域と世界に中国が及ぼす影響を議論したことを明らかにした。写真は日米拡大首脳会談。4月16日、ワシントンのホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター/Tom Brenner)

[東京 17日 ロイター] - 訪米中の菅義偉首相は16日午後(日本時間17日未明)、バイデン大統領と会談後にそろって会見し、インド太平洋地域と世界に中国が及ぼす影響を議論したことを明らかにした。台湾海峡の安定、同盟の重要性などを確認したとした上で、日本が防衛力を強化していく決意も伝えたと語った。その後にシンクタンクで講演した菅首相は、中国と建設的な関係を築くことにも意欲をみせた。

<中国の威圧に反対で一致>

菅首相は会見で「3月の日米外交・防衛閣僚会合(2プラス2)で一致した認識を改めて確認し、その上に立って、さらに地域のために取り組むことで一致した」と強調した。今後の日米同盟の羅針盤となる共同声明を取りまとめたとした。

菅首相は、「インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について真剣に議論を行い、東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試みと、地域の他者に対する威圧に、反対することでも一致した」と述べた。

その上で「台湾海峡の平和と安定の重要性は日米間で一致しており、今回改めて確認した」と述べた。中国が軍事的な圧力を強める台湾、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新彊ウイグル自治区を巡る議論の詳細は控えたが、「新疆ウイグルの状況についても日本の立場や取り組みを説明し理解を得られた」と語った。

北朝鮮による日本人拉致問題については、日米が連携し北朝鮮に即時解決を求めることを確認した。

<五輪への決意にバイデン支持>

両首脳は今夏の東京五輪・パラリンピックについても議論。菅首相が開催への決意を示すと、バイデン大統領が支持を表明したという。菅首相は会見で、米国の選手団派遣に関するバイデン大統領の発言内容について問われたが、明らかにしなかった。

このほか、デジタル分野やイノベーションの推進、ワクチン供給など新型コロナウイルス対策、気候変動などで協力していくことでも一致した。途上国を含め、各国がワクチンを公平に確保できるよう多国間や地域の協力を推進する。

  日米で温暖化ガスの排出削減を主導し、脱炭素化やクリーンエネルギーに関する「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることでも合意した。

また、日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)に対して日米安全保障条約第5条が適用されることも改めて確認した。第5条は、日本の施政下にある領域への米国の防衛義務を定めている。

両首脳は、アジア系住民への差別や暴力事件が全米各地で増加していることも議論。菅首相は、人種による差別はいかなる社会でも許容されないと一致したと述べた。

菅首相は、1月に就任したバイデン大統領が対面で会談する初の外国の首脳となった。

<北朝鮮問題は日米韓で連携>

菅首相は会見後、ワシントンにあるシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)主催のイベントでオンライン形式で講演した。日本は日米同盟を強化する一方、多国間の協力も重視するとした。東南アジア諸国連合(ASEAN)が、自由で開かれたインド太平洋への関心を高めるよう促したいとも述べた。

国軍が市民を弾圧するミャンマー、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新疆ウイグル自治区、民主化が後退する香港などについて、具体的行動を取ると語った。その一方で、中国とは安定して建設的な関係を築きたいとも述べた、。

このほか講演では、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記と会う用意があると改めて表明した。北朝鮮問題には日米韓で連携するとした。

*内容を追加しました。

(竹本能文)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、1─3月期は予想下回る1.6%増 約2年

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中