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焦点:色あせる中国「一帯一路」、国際金融の舞台で矢面に

2018年10月16日(火)08時05分

 10月14日、インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。バリ島で12日撮影(2018年 ロイター/Johannes P. Christo)

[ヌサドゥア(インドネシア) 14日 ロイター] - インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。

中国はこの構想をグローバル化推進の原動力と位置付けて脚光を浴びたが、保護主義台頭への不安が広がる中、輝きは褪せてきたようだ。

国際金融協会(IIF)の前会長、チャールズ・ダラーラ氏は総会で「中国はある意味で(国際貿易)体制に便乗しているとの見方が西側で広がっていると思う」と述べ、「1980年代の日本に対する西洋の見方を思い起こさせる。そっくりだ」と続けた。

こうした見方はトランプ政権に限らない。ラガルドIMF専務理事もバリ島での貿易会合で、知的財産保護や競争の確保、行き過ぎた市場支配的立場回避の重要性を訴えた。中国を名指しはしなかったが、いずれもトランプ政権がたびたび中国について指摘する課題だ。

これまでトランプ氏の関税政策について集中砲火を浴びることが多かったムニューシン米財務長官は、今回の会合では従来より自信を増し、「自由で公正な相互貿易」を求めるトランプ氏の望みがより良く理解されるようになったと指摘。さらに、「(同盟国は)中国に圧力をかけるための連合ではない。中国に関連してほぼ共通の課題に直面し、志を同じくする人々の連合だ」と強調した。

<一帯一路>

総会では、中国が期待していたと見られる方向から議論が急転換したため、中国高官らはより守勢に立たされたようだ。

一帯一路に関する世銀のパネル討論会では、この構想に加わった小国の債務の持続性や、小国が中国との交渉力を欠いていることなどについて、中国高官らが質問責めにされた。

ブルッキングス研究所のシニアフェロー、デービッド・ダラー氏はパネルで、「一帯一路プロジェクトが極めて良いものだったとしても、低所得国にとっては過剰な債務を抱える深刻なリスクがある」と指摘した。

中国側の出席者からは、国際機関がトランプ政権の関税政策は阻止できないのに、国際協調を訴える中国の構想は無視されていると不満の声も漏れた。

中国人民大学の幹部は会議の傍ら、「G20、国連、世銀、IMF、WTO(国際貿易機関)を含むすべての会議が強固で生産的なものになり、保護主義や一国主義などあらゆる誤りを抑え込んでほしい」と語った。

(Yawen Chen記者 David Lawder記者)

ロイター
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