ニュース速報

ビジネス

気候変動関連の資金供給制度、情勢変化に柔軟対応が可能=黒田日銀総裁

2021年06月18日(金)18時35分

 6月18日 日銀の黒田東彦総裁は18日、金融政策決定会合後の会見で、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの期限を来年3月まで延長することを決定したことについて、対面型サービスに下押し圧力が強く、「新型コロナの影響でストレスが掛かる状況が続くとみている」と背景を説明した。写真は2020年1月21日、日銀本店で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 18日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は18日、金融政策決定会合後の会見で、気候変動リスクへの金融政策面での対応として新たな資金供給制度を導入することを決めたことについて、この問題を巡る情勢が変化しやすい中でも柔軟な対応が可能なことを理由に挙げた。市場からは、独自の「日本モデル」だと評価する声も出ている。

日銀は新制度を通じ、民間金融機関が自らの判断で取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスする。7月決定会合後の適切なタイミングで、気候変動への取り組み方針の全体像を公表する予定。黒田総裁は会見で、グリーンボンドは社債買い入れの対象になると話し、積極購入には距離があるとの認識を示した。

金融政策として気候変動対応に乗り出すには、資源配分や市場中立性の観点からハードルが高いと見られてきた。黒田総裁は「先進国の中央銀行と意見交換してきた。それぞれいろいろな制約条件はあるが、中央銀行として何らかの対応すべきではないかという認識が広がっている」と指摘。日銀として何ができるか「かなり長い期間、議論してきた」と述べ、今回の決定タイミングは6月5日の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議の声明や政府の動きとは関係がないとした。

市場からは新制度について前向きな受け止めも出ている。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、市場中立性に配慮して民間経済主体の行動に委ねた点は、独自の「日本モデル」の創出と判断できると指摘。中銀が担うべき役割を吟味し、相当に熟慮された方式を考案したものとして「ポジティブに評価されるべきだ」と述べた。

<ワクチン接種は予想以上のペース、「明るい見通しに向かっている」>

日銀は決定会合で新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの期限を来年3月まで延長することも決定した。黒田総裁は、対面型サービスに下押し圧力が強く、「新型コロナの影響でストレスがかかる状況が続くとみている」と背景を説明した。

一方、国内ではワクチン接種が予想以上に早いペースで進んでおり、「前よりも明るい見通しに向かっている」とも述べた。「この調子でワクチン接種が進んでいくと、対面型サービス消費の回復は以前みていたより早くなる可能性がある」との見方を示した。

<日銀のETF保有、企業統治へのマイナス影響ない>

日銀は4月21日の買い入れを最後に約2カ月間、ETFを購入していない。黒田総裁は、「3月の政策点検の結果、市場が不安定化した時に大規模に購入する方が効果が大きいということがはっきりした」とし、より機動性・効果を高める観点からより弾力的に行っている、と説明した。ETFの購入は金融緩和措置の一環であり、「これをやめるとか保有しているETFを売却するとか今は考えていない」と述べた。

昨年の東芝の株主総会を巡る外部調査報告書の影響もあり、日本の企業統治のあり方が注目されているが、黒田総裁は「日銀のETF保有が日本のコーポレートガバナンスにマイナスの影響を与えているとは考えていない」と語った。

(和田崇彦、杉山健太郎)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ

ビジネス

アングル:日経平均1300円安、背景に3つの潮目変

ワールド

中東情勢深く懸念、エスカレーションにつながる行動強

ワールド

ウクライナ中部にロシアミサイル攻撃、8人死亡 重要
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中