ニュース速報

ビジネス

アングル:韓国サムスン、インド市場で巻き返し 反中感情が追い風

2020年08月09日(日)07時39分

 韓国のサムスン電子が、中国勢に押されるインドのスマートフォン市場で巻き返しに出ている。写真はインドのノイダにあるサムスンの製造施設前で2018年7月撮影(2020年 ロイター/Adnan Abidi)

[ニューデリー/ソウル 3日 ロイター] - 韓国のサムスン電子<005930.KS>が、小米集団(シャオミ)<1810.HK>などの中国勢に押されるインドのスマートフォン市場で巻き返しに出ている。新型コロナウイルス危機でオンラインの活動が増えているのを背景に、格安スマホの新機種を取りそろえて挑む。

6月にインドと中国の国境付近で軍事衝突が起こり、反中感情が高まっていることも追い風となりそうだ。

インドのスマホ市場において、サムスンは中国企業以外で唯一の主要勢力。調査会社カウンターポイントによると、サムスンは第2・四半期のシェアが26%と、シャオミの29%に次いで2位に躍り出た。前期はシェア16%で3位だった。

サムスンは過去数年間、割安感のある中国ブランドにシェアを奪われてきた。ただカウンターポイントによると、インドは同社の個人向けスマホ売り上げが年間約75億ドル(約8000億円)と、米国に次ぐ巨大市場だ。

同社はニューデリー近郊に「世界最大の」スマホ製造プラントを持っており、新製品のテストや輸出用機器の組み立てを行っている。

この生産力に加え、社内で多くの部品を調達できる体制が、新型コロナ危機下でのシェア拡大に寄与した。中国のシャオミとOPPO(オッポ)は生産に支障が出て出荷が遅れたが、サムスンは円滑に出荷を続けることができた。

サムスンはこの流れに弾みをつけようと、6月以来7つの新機種を導入。うち3機種は価格が1万ルピー(133.63ドル、約1万4000円)未満で、最も安いアンドロイド版は75ドルだ。

サムスンのインド戦略に詳しい筋は「新型コロナ危機により、オンライン教育からデジタル決済、はては友達とつながるための電話会議まで、あらゆる事にスマホが使われるようになった。マス市場で格安スマホに注目が集まったのはこのためだ」と語る。

サムスン広報担当者は、インドでは同社製スマホの需要が旺盛で、昨年に比べて増収を期待していると説明した。

<厳しい競争>

シャオミなどの中国勢は、反中感情に対抗するため「メード・イン・インド」のイメージを打ち出しており、サムスンにとって依然、手ごわい相手だ。インドの複合企業リライアンス・インダストリーズと米グーグルが、アンドロイド採用の格安スマホで提携したことも、サムスンの格安スマホにとっては脅威となる。 

インドにおける反中感情は今に始まった話ではないが、中国勢のスマホは安さに定評がある。サムスンはブランドイメージで勝るにもかかわらず、価格に敏感なインドの消費者の獲得に苦戦してきた。

ただ、6月の国境紛争後、インド政府は中国製アプリを禁じ、中国からの輸入製品のボイコットを呼びかけている。このタイミングでより安い機器が投入されれば、市場の勢力図が変化する可能性がある。

ブランドストラテジストのハリシュ・ビジュール氏は「インドにおけるスマホブランドのイメージで言うと、サムスンはアップルに次いで第2位だ。したがって、サムスンから6000─1万5000ルピーのスマホが出れば、中国勢からシェアを奪える可能性は十分にある」と話した。

インドでは、アップルのiPhone(アイフォーン)最安機種が3万1500ルピー前後、シャオミの最安機種が7500ルピー前後で売られている。

中国ブランドのスマホは自分は嫌だが、オンライン授業のため仕方なく先月息子に買い与えたという民間企業勤務の男性は「サムスンの方が中国製スマホより耐久性に優れていると思うので、1万ルピーを切る機種が増えれば確実にサムスンを選ぶ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、利下げペースは緩やかとの想定で見解一致

ワールド

米制裁が国力向上の原動力、軍事力維持へ=北朝鮮高官

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3% 市場予想

ビジネス

バイオジェン、1―3月利益が予想超え 認知症薬低調
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中