ニュース速報

ビジネス

英GDP、5月は1.8%増にとどまる V字回復期待後退

2020年07月15日(水)02時04分

 7月14日、英国立統計局が発表した5月のGDPは前月比1.8%増加した。過去最大の落ち込みとなった4月からは回復したが、予想を大きく下振れ、V字回復期待が後退している。写真は3月18日、マンチェスターの商業施設で撮影(2020年 ロイター/Phil Noble)

[ロンドン 14日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が14日発表した5月の国内総生産(GDP)は前月比1.8%増と脆弱な回復にとどまり、景気の早期回復期待に反する内容になった。英予算責任局(OBR)は英経済が今年、産業化以前の時代以降で最大の落ち込みを記録するとみている。市場予想は5.5%増だった。

封鎖措置が最も厳しかった4月のGDPは20.3%減と、過去最大の落ち込みだった。

5月は主要なサービス部門が予想ほど持ち直さなかった。6月と7月は新型コロナウイルスの感染拡大が減速する中、事業再開が認められた企業が増えたが、5月の統計は経済の回復度合いについて疑問が生じる内容と言える。

HSBCのエコノミスト、サイモン・ウェルズ氏は「経済指標がV字回復を示していると捉えていた者にとって、この日はちょっとした後退だ」と述べた。

新型コロナによる打撃で英経済は3月と4月に25.9%縮小した。約900万人が現在、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の被害を受けた雇用主を対象とした支援制度を通して給料を受け取っている。制度は10月に終了する。

スナク英財務相は先週、追加で300億ポンドの支援策を発表した上で、失業者は増えると認めた。

OBRは中間的なシナリオで、失業率は今年11.9%に上昇する可能性が高いと予測。新型コロナの打撃からの回復が困難と想定した下振れシナリオの場合は13%を超えるという。GDPは2つの下振れシナリオの下で12.4─14.3%減と、300年超ぶりの大幅な落ち込みとなると試算した。政府債務は3220億─3910億ポンドへ膨れ上がる見通しだ。

OBRは、経済を下支えするために借り入れの必要はあるが、「財政を持続可能な状態にするためには、税収を増やすか歳出を減らす必要があるだろう」と述べた。

英国の新型コロナの死者数は4万4000人と、欧州で最も多い。新型コロナ感染の第2波が来た場合、新たな封鎖措置を導入し、回復を妨げ長期的な信頼感を損なう可能性がある。

英政府はバーやレストラン、映画館の営業停止を命じた後、3月23日に生活に必須でない事業やその他の事業も停止した。

5月の限定的な回復は、サービス業が0.9%増と小幅に伸びたことが押し上げ要因となった。サービス業の伸びの市場予想は4.9%増だった。

卸売りと小売り部門が5月の最大の押し上げ要因だった。4月は最大の押し下げ要因だった。

鉱工業生産と建設は予想通り力強く回復した。

エコノミストは、5月のGDPに関して前向きな予想を示していた理由として、より広範にわたる回復を示した民間調査やその他の即時性のある指標を基にしたと述べた。

バークレイズのエコノミストは「企業は消費者よりも、封鎖対策を緩和することに慎重になっている」と述べ、20年と21年のGDP予想を引き下げた。

英商工会議所の経済分析責任者、スレン・ティル氏は、持続的な景気回復のためには、さらに大規模な財政出動が必要になるとし、「5月の生産回復は、蓄積されていた需要が規制緩和で一部表面化したためで、純粋な回復ではないとみられる」と指摘した。

国際通貨基金(IMF)は先月、英経済が今年10%以上縮小すると予想した。

フィデリティ・インターナショナルのディレクター、トム・スティーブンソン氏は「V字回復期待が急速に後退し、2番底をつけてから回復軌道に乗ると今はみている」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、予想外の0.25%利上げ 通貨下

ワールド

再送-イスラエル、近くラファに侵攻 国内メディアが

ビジネス

ECB、追加利下げするとは限らず=独連銀総裁

ビジネス

焦点:企業決算、日本株高再開の起爆剤か 割高感に厳
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中