ニュース速報

ビジネス

日経平均3日続伸、悪材料に反応せず:識者はこうみる

2020年06月03日(水)15時50分

3日の東京株式市場で日経平均は続騰してスタート、その後も高値圏でもみ合っている。写真は2018年11月、東京で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 3日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均株価は3日続伸した。前日の米国株高や為替の円安基調を好感し、朝方から買いが先行。その後、上げ幅を500円近くまで拡大した。香港や新型コロナウイルスを巡る米中関係の悪化や、米国で広がる抗議デモなど悪材料もあるが、それに「ほとんど反応しない異様な相場」との声も聞かれる。

市場関係者の見方は以下の通り。

<三菱UFJモルガンスタンレー証券・チーフ投資ストラテジスト 藤戸則弘氏>

急速な株価上昇の背景には新型コロナウイルス感染症のワクチン開発があるようだ。英オックスフォード大学とワクチンの共同開発をしている英製薬大手アストラゼネカは5月20日、臨床試験が成功した場合は9月から供給を開始する見通しを示した。ワクチンの実用化には数年かかると言われていただけに、この発表以降世界の投資家が強気に傾き始めた。

新型コロナ「第2波」への警戒感が強まる中で、コロナ脱却への道筋が見え始めたのは大きな朗報だ。ただ、3月の急落時のショートポジションを持ったままの投資家はがくぜんとしただろう。ワクチン開発が想定以上に速く動いていることを受け、6月12日のメジャーSQを前に急速な買い戻しに動いているようだ。加えて、世界の中銀による未曾有の金融緩和はハイパワードマネーが株式市場に流れ込む要因となった。米中関係悪化や米国での抗議活動などリスクはあるものの、悪材料にほとんど反応しない異様な相場となっている。

今の株式相場は「実体経済の落ち込みは織り込み済み。これからはV字回復」といった楽観論が先走っているが、マクロ経済の観点から考えるとV字回復には懐疑的にならざるを得ない。上昇の背景は中長期的なファンダメンタルを評価をした実需買いというよりは、ショートカバーが中心だ。こういう相場は買い戻しがいったん終わったとたん、大きく降下する傾向がある。そこに構える必要がある。

<岡三証券 チーフストラテジスト 松本史雄氏>

少なくても方向性は上、というモメンタムでここまで買われてきたが、来月以降、企業収益や経済活動全体の「水準」に議論が移ってくるだろう。7月下旬から8月上旬にかけて業績予想を開示していない企業が、足元の状況を考慮して見通しを出してくる。株価も上値追いに慎重な局面に入っていきそうだ。

短期的には12日のメジャーSQが転換点になるかもしれない。3月のメジャーSQのところでボトムを打ち、ほぼ一本調子で上昇してきた。日経平均は2万3000円程度まで行く可能性もあるが、このような急角度の上昇は長く続かない。それほど遠くない時期に上昇のカーブが寝てくるとみている。

期待先行の「空中戦」で上昇してきただけに、経済の回復度合いや企業収益の水準を見極められるようになれば、実力値は2万1000円程度となってもおかしくはない。

<みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 三浦豊氏>

ショートポジションが積み上がっている需給状態を踏まえれば、来週のメジャーSQ(特別清算指数)算出までは買い戻しを中心に、途中で反落する場面がありながらも、買いが先行しやすい相場展開になるのではないか。環境面では米国株の動き次第という側面があるものの、米国市場でもショートポジションがたまっている。全米に広がるデモなど懸念材料はあるが、米株も同様に買い戻しで上値を追いそうな状況だ。

需給が主導する相場となっているだけに、上値の目安というのは計りにくい。そうした中で、日経平均は2万3000円を超す可能性があるとみている。ただ、需給主導の動きもSQ算出までなので、その後は環境をみながらの動きとなりそうだ。

*内容を追加、見出しを差し替えました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中