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マイナス0.1%の政策金利、深掘りの余地十分ある=黒田日銀総裁
11月19日、日銀の黒田東彦総裁は、参議院財政金融委員会で「マイナス0.1%の政策金利に深掘りの余地は十分ある」と述べ、追加緩和手段として政策金利の引き下げも排除していないとの姿勢をあらためて示した。写真は衆議院予算委員会で答弁する黒田氏。2018年2月13日撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日、参議院財政金融委員会で「マイナス0.1%の政策金利に深掘りの余地は十分ある」と述べ、追加緩和手段として政策金利の引き下げも排除していないとの姿勢をあらためて示した。
国債買い入れについても、市場には国債はまだ十分あるとして「買い入れることがこれ以上できないことはない」と強調した。
「通貨および金融の調節に関する報告書」(半期報告)に関する質問に答えた。
黒田総裁は追加緩和策について「無制限にいくらでもできるとか手段が無尽蔵にあるとは言っていない」と説明。その上で「ベネフィットだけでなく、コストも比較考量して最適な政策手段を決めていく」と語った。
日銀は現在、金融緩和の一環として上場投資信託(ETF)の買い入れを行っているが、市場では株価形成をゆがめる副作用を指摘する声もある。
黒田総裁は、副作用は承知しているとしながらも「ETF買い入れはこれまで株式市場のリスクプレミアムが過度に拡大することを防ぐという意味では大きな役割を果たしてきた」と述べ、理解を求めた。
ただ「ETFを買い入れている中央銀行は現時点では先進国にはない」として、注意しながら買い入れを行っているとも強調した。年間6兆円の買い入れ額については弾力的に行っていく方針をあらためて示した。
日銀は消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)で前年比2%上昇を目標に掲げているが、政策委員の2021年度の大勢見通しの中央値は前年比1.5%上昇と目標達成にはなお距離がある。
黒田総裁は2021年度に2%を達成する可能性について「きわめて低い」との見解を示す一方で、今後も2%の目標は必要だと強調。その理由として、主要国の中央銀行が2%の物価目標を掲げることで、中長期的に為替レートを安定させる効果があることなどを挙げた。
<円のデジタル通貨計画ない>
黒田総裁は円のデジタル通貨について、現時点で発行する計画はないと従来の見解を繰り返したが、将来発行する必要性が高まった時に備えて、調査・研究は進めていると説明した。
一方、リブラなどステーブルコインについては「普及がグローバルに進むと、金融政策や金融システムの安定にも影響を及ぼす可能性がある」と懸念を示した。
黒田総裁は「世界各国におけるデジタル通貨に関する取り組みは今後も注意深くみていきたい」と指摘。「主権国家が発行するデジタル通貨はリブラのような民間団体が発行するデジタル通貨と根本的に違っているので同じように扱うことはできないが、同じような問題も引き起こし得る」と述べ、今後も注視する姿勢を示した。
中国が発行に意欲を示しているデジタル人民元については、2020年の東京五輪・パラリンピック時に日本で流通する可能性はないとの見通しを示した。
中国経済に関しては当面6%程度の成長は続けられるとの見通しを示す一方で、長い目で見ればだんだん減速していくとの見方を示した。
中国をめぐっては過剰債務による債務危機リスクを指摘する声もあるが、黒田総裁は「今の時点で爆発的な債務不履行による金融システムや経済全体の機能不全が起こるとはみていない」と否定的な見方を示した。
*内容を更新しました。