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焦点:意外高の日本株、海外勢買い戻しなど需給逆回転
9月19日、日本株が意外高を演じている。特段の好材料が出たわけではなく、むしろ米国による対中追加関税など悪材料が浮上する中での大幅高だ。写真は都内の株価ボード。昨年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 19日 ロイター] - 日本株が意外高を演じている。特段の好材料が出たわけではなく、むしろ米国による対中追加関税など悪材料が浮上する中での大幅高だ。変化がみられるのは需給面。年初から大幅に売り越していた海外勢が買いに転換し、売り方はショートカバーを余儀なくされている。株高の勢いは強いものの、「ストーリー」が弱い中で本格的な上昇局面に入ることができるのか注目されている。
<グローバル株反転に乗る>
今年年初から9月第1週までの海外勢による日本株の累計売り越し額は、約8.5兆円。いわゆる「アベノミクス相場」での海外勢の年間売り越し額の最高は、15年の3兆2820億円。その2倍以上の売り越しだったが、ようやく買い戻しに動いているようだ。
8.5兆円の内訳は、現物が約4.4兆円、先物が約4.1兆円。「買いの中心は海外勢。ヘッジファンドなど短期筋だけでなく、長期投資家からの買いも入っている」(国内証券トレーダー)という。
ゴールドマン・サックス証券の11日付リポートによると、米国に本拠を置くロングオンリーの44の国際株式ファンドのベンチマークに対するアンダーウエートの度合いは、7月末時点で約8%。アベノミクス開始前の5%を大きく上回っていた。
買い戻しに転じた理由は、割安感や業績期待感、安倍晋三首相の自民党総裁3選への期待(政策安定感や財政刺激策)などが指摘されている。だが、どれも以前から指摘されていた材料であり、目新しいわけではない。
米国による2000億ドル相当の商品への追加関税の実施方針にもかかわらず、反発を続けている中国株にみられるように、グローバル株式全体が反転基調に入る中で、米株と比べて割安感があった日本株にも、海外勢の買いが流れ込んできたようだ。
<慌てたコールの売り手>
いくつかのテクニカル的な節目を突破したことで、CTA(商品投資顧問業者)などトレンドフォロワーが買いに参戦。ショートの踏み上げを伴って意外高となっている構図だとみられている。
中でも冷や水を浴びせられたのがコール・オプション(買う権利)の売り手だ。
相場にこう着感が強まり、指数の大きな変動が見込めない局面では「セル・ボラティリティー」の戦略を取る投資家が現れる。オプションのプレミアムには時間的価値が含まれるため、相場が動かなければ、SQ(特別清算指数)に近づくにつれプレミアムは低下。オプションの売り方は利益を得られる。
日経平均の10月限コール・オプション(買う権利)の建玉が、最も積み上がっていたのは権利行使価格2万3500円。これを突破したことで「コールの売り手が先物を買うことで損益分岐点を上げ、損失を限定させる動きに出た」(国内証券)とされ、裁定買いを誘発したとの指摘もある。
フェアラインパートナーズの堀川秀樹代表は「前週の段階では、2万3500円など考えられない水準だった。日経平均だけの上昇なら心配だが、TOPIXが7月高値を超え堅調なのもポジティブ。2万4000円タッチの可能性については懐疑的な見方もあるが、再びオプション投資家が慌てさせられるリスクがある」と話す。
<昨年秋の再現期待も>
市場では、昨年秋のような上昇トレンド相場を期待する声も出ている。
昨年、北朝鮮情勢の緊迫化や森友・加計学園問題などが警戒され、夏まで日経平均は2万円を下回る水準で推移。だが、衆院解散・総選挙の観測が高まると、9月8日を底に株価は上昇し、10月には過去最長となる16連騰を記録した。
海外勢の売り越しが溜まっていた点や、裁定買い残の減少など需給面での類似点も多い。昨年9月8日安値から11月8日高値までの上昇幅4142円、上昇率21.5%を今年の9月7日時点の日経平均に当てはめると2万6940円。91年4月以来の高値を付けることとなる。
ドルトン・キャピタル・ジャパンのシニアファンドマネージャー、松本史雄氏は「目先は日本株の上昇のトレンドが続きそうだ。もともとバリュエーションは低水準にあった。通常のバリュエーションの年間変動率を考慮しても、2万5000円台にいったん乗せても不思議ではない」との見方を示す。
ただ、依然として日本株を積極的に買う材料は乏しいとの声も多い。「安倍首相3選後に、成長戦略が開花するとは思えない。財政刺激策に頼る姿は昔の日本そのもの。日米通商協議はこれからだ」(国内投信)。消去法的な買いが一巡した後も上昇トレンドを維持できるのか。正念場はこれからだ。
(長田善行 編集:伊賀大記)