ニュース速報

ビジネス

日銀ETF購入策に神経質な市場、ステルステーパリング開始の見方も

2018年08月17日(金)19時52分

 8月17日、日銀が金融政策を微調整した後のETF(上場投信)購入方法に市場参加者が神経を尖らせている。8月以降、日銀がETF買いに動いたのは2日のみ。前場のTOPIXの下落率が、従来なら買い入れに動いていてもおかしくない水準にあっても、買い入れが見送られるケースもあった。日銀本店で2016年7月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

[東京 17日 ロイター] - 日銀が金融政策を微調整した後のETF(上場投信)購入方法に市場参加者が神経を尖らせている。8月以降、日銀がETF買いに動いたのは2日のみ。前場のTOPIXの下落率が、従来なら買い入れに動いていてもおかしくない水準にあっても、買い入れが見送られるケースもあった。

市場では早くも「ステルステーパリング」の兆しを指摘する声もある。

日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定。ETFについては年間6兆円の目標は維持する一方で、「市場の状況に応じて買い入れ額は上下に変動しうる」とした。

8月に入り日銀が通常のETF買い入れに動いたのは10日と13日の2回のみ。日銀が買い入れに動く目安とされる前引け時点のTOPIXの下落率は10日が0.56%、13日が1.72%だった。

先月末の政策修正前は、TOPIXの下落率が0.2%を超えた場合は、ほとんどの場合買い入れを実施してきたが、今月に入ってからは、下落率が0.2%を超えても様子見が続き、14、15日の2日間は下落率が0.4%を超えたにもかかわらず、日銀の買い入れは見送られた。このため、市場では日銀がETF購入を巡り「ステルステーパリング」に動いているのでは、との疑念が広がりつつある。

ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏は「8月に入ってから(日銀はETFを)買わなくなった。ルールを変えたのは間違いない」と指摘。「十中八九、ステルステーパリングだろう」との見方を示す。

もっとも、日銀が政策の微調整に動いてからまだ1カ月も経っていない。これまでもTOPIXが前場で値幅を伴った下げをみせても、買い入れが見送られたケースがあった。

三菱UFJモルガンスタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「サンプル数がまだ少ない。しばらくは日銀の出方をウオッチする期間」だと指摘。そのうえで「現時点でダウンサイドの影響を予測することは時期尚早だが、(買い入れを)減らす場合もマーケットが痛みを感じないようにやっていくはず」と話す。

(植竹知子、長田善行 取材協力:佐野日出之 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

ECB、年内に複数回利下げの公算=ベルギー中銀総裁
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中