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中計は拡大路線、6年後預かり資産100兆円=中田・大和証券G社長
5月22日、大和証券グループ本社の中田誠司社長(写真)は、ロイターとのインタビューで、2020年度には経常利益2000億円以上、ROE(株主資本利益率)10%以上を目指す中期経営計画について「拡大を意識した」と表明、成長路線に大きくかじを切る路線を打ち出した。写真は都内で昨年5月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 22日 ロイター] - 大和証券グループ本社<8601.T>の中田誠司社長は、ロイターとのインタビューで、2020年度には経常利益2000億円以上、ROE(株主資本利益率)10%以上を目指す中期経営計画について「拡大を意識した」と表明、成長路線に大きくかじを切る路線を打ち出した。預かり資産は20年度に80兆円以上を目指し、その後の3年間で100兆円を視野に入れる。
同社の預かり資産は3月末時点で68兆円で、預かり資産の増加は顧客からの信頼の証しと強調した。法人、リテールともに上積みを図る。海外戦略では、中国を起点としたクロスボーダーM&A(合併・買収)ビジネスを強化する方針を示した。
インタビューの詳細は次の通り。
――2020年度に経常利益2000億円、ROE10%とする中計を発表した。
「今後はボトムライン確保ではなくて、拡大を意識する。前期は経常利益1550億円。14年度に約1900億円を上げたが、外部環境がアベノミクスの最盛期だったことを考えると、今回の目標は保守的な数字ではない」
「前期のROEは8.8%であり、なかなか厳しいハードルだ。今回掲げた定量的な目標はかなり高いレベルだ。多少背伸びしなければならないが、3年後のターゲットとして良い目標値になっている」
――預かり資産は現在の68兆円から80兆円に拡大させる目標だ。
「今回の中計には、顧客満足度を本格的な業績評価指標として入れ込んだ。顧客から信頼を得られれば取引の増加に結び付き、当然預かり資産も増えるだろう。市場環境による時価要因もあるが、現在の68兆円からすると楽な数字ではないが、次の3年での100兆円という目標が込められている」
――預かり資産はこの1―3月期で7兆円増えており、ペースは速い。
「社内で預かり資産の目標を掲げていたので、今まであまりそういう活動をしていなかった法人顧客にも、声掛けして預けてもらった。しかし、ここから先は巡航速度に戻る。リテール部門の資産導入額は四半期で2000億円程度なので、3年後の目標額はそんなに簡単に達成できる数字ではない」
――法人から預かる株券などは、手数料を生まない資産なのではないか。
「預かり資産のクオリティーを入り口で判断するのは難しい。法人にとっても株券は大切な資産だ。数ある証券会社がある中で、それを他に預けずに大和に預けてもらうことは、暗黙の信頼の証しだ。株券を売却する際には、預けてある証券会社にファーストコールが掛かりやすい。株券を預かることが将来的にまったく収益を生まない、クオリティーのないものかというとそうではない」
――預かり資産残高は、預金を背景にした銀行系証券が猛追している。
「専業証券の方が、優位性がある。銀行系証券が銀証連携モデルを始めて数年が経つ。グループ内に銀行の何十兆円という預金を持った顧客取引がある中で、ここ数年の預かり資産の増加をみても、大したことないというのが率直な印象だ。専業証券が、商品の差別化なり、もともと持っている優位性できちっとやっていけば十分に戦っていけると確信している」
――20代や30代の若年層に対する取り組みは。
「KDDIと資本業務提携したが、スマホを経由した1000―2000円の積み立て投資や、個人型確定拠出年金がすぐに収益になるとは思っていない。今は20―30代の人がネット証券でやり取りしている。しかし、その人たちが本当に相続や大きなお金が入った時に、そのままスマホで取引をするだろうか。その時には信頼できるコンサルタントに相談する」
「問題は20―30年後に今の20―30代がいよいよ資産を持つ層になった時だ。その時に、大和証券て何、とならないようにしておく必要がある。KDDIとの提携もそうだが、幅広く商品を出しておいて、お金が入った時には大和と相談してみようとなればいい」
――国内の法人取引は、どのように拡大させていくか。
「顧客のターゲットを絞って、手厚くサービスを提供する。大和の顧客基盤は15―20%と限られていて、拙速に25%とか30%を取りにいってもリソースが広く薄く分散してしまい、全部討ち死にしてしまう。リソースをどこに集中させたらいいのかを考え、着実に陣地と信頼を獲得し、勢力を少しずつ拡大していく。実際、昨年度はリーグテーブルなどをみても、プレゼンスが上がっている」
「何でもかんでも主幹事を取らなくてもいい。日本は財閥系の支配が強かったために、メガバンクグループの力が大きい。しかし、証券会社としては頼りないところもあり、主幹事とは別にセカンドオピニオンを求めてくる会社もある」
「大きな会社は場合によっては、サードオピニオンも求める。そういう時に大和がきちんと入っていければいい。主幹事は主幹事でしっかり守り、セカンドオピニオンやサードオピニオンの立場を狙っていけば、案件に結びついていく」
――海外での成長戦略は。
「アジアは、オーガニックに出ていくのではなく、現地の独自規制があるので、現地に精通した金融機関とパートナーを組み、出資しながら拡大していく。証券会社を買収することは考えていない。アジアのM&Aビジネスは、ほぼ全地域でチャンスがあると思っている」
「もっと強化しなければならないのは中国だ。中国はやはり巨大な市場で、中国を足場にしたクロスボーダーのM&A案件は今でも多く、拡大余地がある」
「エクイティも同様だ。アジアの国々はまだ時価総額も小さいし、非常に未成熟だが、10―20年タームで考えると国の成長とともに資本市場が拡大が想定される。ある程度時価総額があり、流動性の大きいマーケットに対してはアクセスを強化していきたい」
※インタビューは14日に行いました。
(布施太郎、和田崇彦 編集:田巻一彦)