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焦点:GDP8四半期連続成長 デフレ脱却宣言へ円高・春闘が関門
2月14日、日本経済は昨年末まで8四半期連続成長となり、好循環が回り出したかに見える。経済指標の上では、デフレ脱却宣言に必要な条件が整いつつあるなかで、年明け以降の市場変動が暗い影を投げかけている。写真は東京・銀座の歩行者天国。2014年11月撮影(2018年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 14日 ロイター] - 日本経済は昨年末まで8四半期連続成長となり、好循環が回り出したかに見える。経済指標の上では、デフレ脱却宣言に必要な条件が整いつつあるなかで、年明け以降の市場変動が暗い影を投げかけている。足元の円高・株安が長期化すれば、企業収益を起点とした好循環に水を差す可能性も出てきた。政府は今のところ実体経済に影響する程ではないとみているが、円安や春闘への期待がしぼむことにならないか、状況を慎重に注視している。
<低成長でも評価高い内容、内需の強さ続く>
GDP発表を受けて茂木敏充経済財政担当相は「経済の好循環が実現しつつある」との見方を示した。昨夏の経済白書で石原伸晃担当相(当時)が「好循環が着実に回り始めている」と表現していたのに比べ、一歩進めた表現を使った。
もっとも、潜在成長率より低い年率0.5%成長にとどまり、民間エコノミストの間では、景気の先行きに陰りが出るリスクを指摘する声もある。
ただ、GDPの構成要素の詳細をチェックしてみると、別の見方もできそうだ。
第一生命経済研究所・主席研究員の新家義貴氏は「前2四半期の高い成長の後であることを考えると、弱い数字とは言えない」と指摘。加えて7─9月期とは正反対に、今回は内需の強さにより在庫が取り崩され、輸入の増加につながったことが統計上、成長率押し下げ要因となった。弱めの数字とは裏腹に内容が評価できると指摘した。
<デフレ脱却へ重要な年、残るは春闘の波及効果>
昨年末までの経済状況を踏まえ、今年1回目の経済財政諮問会議(1月23日)では「今年はデフレ脱却に向けた重要な年だ」との認識が広がった。
民間議員や官僚からは、デフレ脱却を判断する経済指標について、GDPでの需給ギャップがプラスに転じたことをはじめ、デフレーターや単位労働コストもプラスとなったとして「消費者物価指標(CPI)以外の条件はそろっている」との見方が示されている。「あとは春闘の賃上げ率がコアコアCPI(エネルギーや生鮮食品を除くベース)に、どの程度反映されてくるか見たい」(政府関係者)という状況となっている。
条件を満たしていないコアコアCPIは、政府が重視する条件だ。昨年12月で前年比プラス0.3%。複数の政府関係者の間では、1%程度まで上がってくれば、ある程度条件を満たしたと言えるとの声も出ている。
今春闘での賃上げについても、安倍晋三首相はボーナスや手当を含んで「3%賃上げを」と要請している。
ただ、企業からは、ボーナス・手当を入れても全体平均で3%は「非現実的」との声が大半を占める(2017年12月ロイター企業調査)。
政府内には、世代ごとに傾斜配分し、世代を平均して2.5%以上であれば許容範囲といった見方もある。
<年明けの金融市場の調整、実体経済と物価への波及注視>
しかし、2018年に入って世界の金融・資本市場は乱高下を繰り返し、ドル/円
足元のドル/円は、12月日銀短観における17年度想定レートの110円台から円高にシフトしている。
こうした相場変動が、企業経営者の心理を冷え込ませることになれば、安倍首相が音頭を取った「3%賃上げ」の勢いに水を差すことになりかねない。
また、1月から2月になっても継続している寒波と大雪の影響で、1月景気ウオッチャー調査では、半年ぶりにDIが景気判断の節目となる50を割り込んだ。
野菜価格の高騰や物流の停滞が続き、個人消費にマイナスの影響を及ぼすリスクも懸念されている。
内閣府幹部は「金融市場の調整は、実体経済に悪影響を及ぼす地合いではない」とみているものの、円高や株安の地合いが長期化した場合、企業、個人のマインド悪化を招いて設備投資や消費の減速につながらないか慎重に見極めるスタンスだ。
SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏は、物価動向について「今後は素原材料価格が弱含みへ向かう際に、国内品が最終財段階で上昇を維持できるかが焦点」だとみている。
(中川泉 編集:田巻一彦 )