コラム

「日本会議」は衰退するのか?──神社本庁全面敗訴の衝撃

2021年04月01日(木)19時40分

神社本庁と密接な関係にある靖国神社(写真は202年8月15日、75回目の「終戦の日」に靖国神社を訪れた参拝者) Issei Kato-REUTERS

<日本の保守系政治家に多大な影響力を持つと言われた「日本会議」の本当の実力を探る>

「日本会議」と神社本庁

著述家の菅野完氏の著書『日本会議の研究』(扶桑社)のベストセラーにより、一躍全国区となった草の根保守団体「日本会議」。同会は、日本各地に支部を持つ「日本最大規模」の保守団体で、関連組織に神道政治連盟国会議員懇談会(神政連)を持ち、自民党(安倍前首相や菅義偉現総理ら)を筆頭に保守系政治家や保守業界に多大な影響力を持つ、と「されて」きた

その日本会議の主要構成メンバーである神社本庁(以下、本庁などと略)をめぐって、司法の裁きが下った。本庁の元職員をめぐる解雇問題で、元職員側が本庁による解雇は不当だとして本庁側を提訴。2021年3月18日、東京地裁は原告である元職員の訴えを全面的に認め、本庁側が完全敗訴したのだ。

報道によれば、本庁側は自身が被告となったこの裁判を、「今回の裁判は絶対に負けられない戦い」「(敗訴すれば)包括宗教団体としての組織維持ができなくなる。被告(*神社本庁のこと)は、伊勢神宮や皇室と密接な関係があって、いわば『日本の国体』の根幹を護っている最後の砦である。(中略)決して裁判所が日本の国体破壊につながることに手を貸す事態があってはならないと信じる次第である」(週刊文春2021年4月1日号、*括弧内筆者)と息巻いたが、結果は前述のとおり全面敗訴。

果たしてこの本庁による敗訴は、保守界隈に隠然たる影響力を持つと「されて」きた日本会議の勢力弱体化にもつながる分水嶺となるのだろうか。

神社本庁の「国体の破壊につながる」はよくある抗弁

そもそも、日本会議の主要メンバーとはいえ、神社本庁が今回の裁判を「絶対に負けられない戦い」とか「(敗訴は)日本の国体破壊につながる」などと些か極端とも思える抗戦姿勢を宣言したのはなぜなのか。

筆者はこの問題に詳しい、雑誌『宗教問題』編集長の小川寛大(おがわ かんだい)氏に話を聞くことにした。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英利下げはまだ先、インフレ巡る悪材料なくても=ピル

ビジネス

ダイハツ社長、開発の早期再開目指す意向 再発防止前

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story